和歌山県太地町のくじらの博物館は、自然プールに隣接する海岸「めがね岩」で5月30日、海岸清掃「めがね岩お掃除作戦」を実施した。この取り組みは、海洋ごみの増加が世界的に深刻化する中で、海洋環境の保護保全や環境教育の役割を担う同館が行ったものだ。
海洋ごみが自然プールに流入する危険性
めがね岩は、くじらの博物館の自然プールに隣接する海岸の呼称で、吉野熊野国立公園の一部でもある。入り組んだ地形から海洋ごみがたまりやすく、台風などで高波を受けると、ごみがめがね岩を乗り越えて自然プールにまで押し寄せる場所でもある。
同館では過去に、自然の入り江を網で仕切ったプールで飼育するハナゴンドウが突然餌を食べなくなる出来事があった。血液検査などから貧血を伴う感染症と診断し、投薬治療を続けたが、衰弱は進み約4カ月後に命を落とした。解剖検査の結果、胃の中からくしゃくしゃに丸まったバレーボールほどの衣服が見つかり、外の海から流入した可能性が考えられたという。
清掃には町民やレンジャーが参加
清掃には、スタッフのほか有志で集まった町民、漁業関係者、吉野熊野国立公園管理事務所のレンジャーらが参加。流木などの自然ごみのほか、ペットボトルや瓶、発泡スチロール、ビニール類が目立ち、中には蓋が閉まったプラスチックボトルの中にドロドロの黒いオイルが満たされているものもあった。
約1時間かけて集めたごみは、トラックの荷台が山積みになる量だった。
レンジャーの指摘と所長の呼びかけ
レンジャーによると、世界で海に流出するプラスチックごみは年間約800万トンに上る。また、それらのごみを生き物が食べてしまうだけでなく、漁網などが放置されたり海を漂ったりした場合、生き物を絡め捕り命を奪うこともあると説明する。実際に漁網に絡まったウミガメの写真では、前肢が壊死(えし)していて痛ましい姿だった。
同管理事務所の岸秀蔵所長は、集められたごみを前にして「身の回りの物が多いことに気付いたはず。海への流出を防ぐとともに、繰り返しごみを拾うことが大切」と呼びかけた。
吉野熊野国立公園は昭和11年に指定され、今年90周年を迎えた。熊野灘からみなべ町の千里の浜まで続く「よしくまの海」が10年後も、その先も、多様で豊かな海であるためにも、一人一人が海を守る行動を続けたい。