香川大病院は、腸内細菌のバランスが乱れて下痢や発熱を引き起こす「再発性CD腸炎」を繰り返していた女児に対し、健康な人の便から細菌群を抽出して移植する治療に成功したと発表した。移植から1年半以上が経過した現在も、再発や合併症はみられないという。CD腸炎とは腸に生息する多様な細菌群は「腸内細菌叢(腸内フローラ)」と呼ばれる。このバランスが崩れ、健康な人の腸内にも存在する「クロストリディオイデス・ディフィシル(CD)」という菌が異常繁殖して毒素を作り出すと、下痢や発熱などを伴う「再発性CD腸炎」を発症する。香川大病院でも、CD腸炎と診断される小児患者が年に数人いるという。治療の経緯と方法治療は抗菌薬の投与が一般的だが、約2割の患者が再発し、一度再発するとそのうち約6割が再発を繰り返すとされる。同大医学部小児科学講座の近藤健夫助教は、成人では健康な人の便に含まれる腸内細菌を使った移植が90%以上の高い治癒率であることに着目。国内では小児の実施報告はなかったが、移植可能と考え、院内の倫理委員会に諮って承認を得た。移植は2025年2月、再発を繰り返す当時3歳の女児に実施された。健康な女児の父親から採取した便を生理食塩水で溶かし、滅菌ガーゼで濾過して抽出した細菌叢を、大腸内視鏡を使って女児の腸内に注入した。移植は1時間以内で終了した。成果と今後の展望移植後、女児の腸内では細菌の種類や菌量が増え、下痢などの症状がなくなった。1年半以上たった現在も再発や合併症がなく、腸内フローラが正常に定着したとみられる。今回の成果は日本小児科学会などで発表された。近藤助教は「小児の再発性CD腸炎の治療に対する新しい選択肢ができた。子どもの成長と腸内細菌叢の関連についてもさらに研究を進めたい」としている。