足の親指が小指側に曲がる「外反母趾」は、女性に多い病気として知られている。進行すると親指の付け根が出っ張り、靴を履いたときに激しい痛みが生じ、長く歩くことができなくなることもある。外反母趾の症状を進行させない方法について、スポーツ医学に詳しい関町病院(東京都練馬区)院長で整形外科医の丸山公さんに聞いた。
女性に多い理由と足のアーチの崩れ
丸山さんによると、女性は出産に備えて筋肉や関節を柔らかくするホルモンを持っており、関節が緩い傾向がある。加えて、先のとがった靴やヒールの高い靴を履く習慣が、男性に比べて外反母趾が多い理由として考えられている。「先のとがった靴やヒールの高い靴を履くと、親指を曲げる力が加わります。それが、知らず知らずのうちに変形を進める一因になっています」と丸山さんは指摘する。
足裏のアーチ(土踏まず)が崩れて扁平足になることも、外反母趾の要因の一つだ。足裏の骨や靭帯が弓状に組み合わさってできているアーチは、「天然のバネとクッション」の役割を果たす。しかし、加齢とともに足の内側の筋肉やアーチを支える後脛骨筋などの筋力が落ち、アーチを維持できなくなる人が少なくない。アーチが崩れて扁平足になると、歩行時に足の内側(親指側)に体重がかかり続け、外反母趾になりやすくなる。
痛みと重症度の基準
外反母趾の患者のほとんどは、親指の付け根の関節が突き出し、靴に擦れて炎症を起こし、バニオン(腫れやこぶ)が生じる。歩くと激しく痛み、日常生活に支障をきたすようになって受診するケースが多い。症状が軽度の場合には装具やテーピングで矯正するが、重度の場合は手術が必要になる。外反母趾の変形は、親指が単に曲がっているだけでなく、骨が回転(ねじれ)している「3次元的な変形」であり、手術では数か所の骨を切って再配置するなどの複雑な処置を行う。
日本整形外科学会が2008年に出した外反母趾診療のガイドラインでは、親指が小指側に曲がっている角度と重症度を次のように定めている。
- 15度未満:正常
- 15度~20度:軽度
- 20度~40度:中度
- 40度以上:重度
「まずは自身の足をよく観察して、傾きが15度以上あるかどうかをチェックすることから始めてください。軽度のうちなら、日常生活を見直すことで進行を抑えることも可能です」と丸山さんはアドバイスする。
進行を防ぐための歩き方と靴選び
症状の進行を遅らせるためには、正しい歩き方と靴選びが大切だ。正しい歩き方として、横隔膜を引き上げるイメージで姿勢を正し、かかとから着地して親指の先まで体重をのせるように意識して歩く。足指の筋肉を使い、アーチを支える力を養う。靴の選び方としては、つま先が狭すぎず、自分に合ったサイズのものを選ぶ。また、アーチを支えるサポート機能がある靴を選んだり、足底板(インソール)を使用してアーチを支えたりすることが効果的だ。
自宅でできる足の筋力トレーニング
丸山さんが推奨するのは、自宅でできる「足の筋力トレーニング」だ。「特別な運動で筋肉ムキムキになるというわけではありません。遊び感覚で、足の指に力を入れられることが大切です」と話す。具体的な方法は以下の通り。
- タオルギャザリング:床に置いたタオルを足の指で手繰り寄せる運動で、足の内筋を鍛える。
- かかと・つま先立ち:立った状態でつま先立ちをしたり、逆にかかとだけで立ってつま先を上げたりする運動も筋力アップに有効。
巻き爪との関連と悪循環
外反母趾の傾向がある人は、巻き爪(陥入爪)になりやすいことも知られている。巻き爪で痛みがあると指先に力が入れられず、さらに歩き方が崩れて外反母趾が悪化するという悪循環に陥っている人も少なくない。巻き爪で痛む場合には、合金などの装具による治療で痛みをなくす。「外反母趾も巻き爪も、足指への加圧が適切になされていないという共通点があります」と丸山さん。どちらも防ぐためには、歩行の際に地面を蹴るように歩いて、親指の先にしっかりと圧力をかけることが大切だ。
外反母趾に悩む人は増加傾向にあり、専用の商品も次々登場している。絆創膏メーカーのニチバン(本社・東京)が今年3月、曲がった親指まわりを包み、足指を開いて歩行をサポートする「外反母趾プロテクター」を発売したところ、売れ行き好調で、すでに1万個以上が販売されている。こうしたグッズを使うのも一手だが、まずは簡単な「足の筋トレ」を毎日の生活に取り入れてみるのがいいかもしれない。(読売新聞メディア局 永原香代子)



