大隅良典・東京科学大栄誉教授が細胞内の成分を分解する「オートファジー」の仕組みの解明に道を開き、2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞してから10年となる。この間、研究はどこまで進んだのか。東京医科歯科大大学院を修了後、当時は基礎生物学研究所にあった大隅研究室で研究に加わり、現在は東京大教授としてオートファジーの分子機構や病気との関係を研究する水島昇氏に、細胞内で起きていることの現在地と、医療応用への距離を聞いた。
分子メカニズムの解明が大きく進展
この10年で最も進んだのは分子メカニズムの解明だ。大隅氏はオートファジーに必要な遺伝子や分子を多く見つけたが、当時はそれぞれがどう働いているかまでは十分に分かっていなかった。この10年で分子の構造を明らかにし、その形から働きを説明する研究が非常に進んだ。水島氏は「当時50点ぐらいだった理解が、今は80点ぐらいまで来ている」と話す。
膜の材料の供給源が明らかに
オートファジーでは、細胞内に膜が現れて伸び、タンパク質や小器官を包む袋状の「オートファゴソーム」になる。その膜の材料がどこから来るのかは長く不明だったが、今は近くにある小胞体という小器官から、ATG2というタンパク質が脂質を運んでいることが分かってきた。その脂質を使ってオートファゴソームの膜が伸びていく。一つ一つのタンパク質の働きがかなりよく見えるようになった。
神経機能回復への応用と課題
医療応用への距離について、水島氏は神経機能回復の可能性に言及しつつ、治療への壁があることを示唆した。具体的な臨床応用の時期や手法については、今後の研究の進展が待たれる。



