香川大名誉教授、SNS型ロマンス詐欺で925万円被害 体験を著書に
香川大名誉教授、SNS型ロマンス詐欺で925万円被害

香川大教育学部で法律などを研究した同大名誉教授の高倉良一さん(72)=高松市=が、SNSでのやり取りを通じて恋愛感情を抱かせる「SNS型ロマンス詐欺」で925万円をだまし取られた。体験をまとめた著書「70歳の法学者が、なぜロマンス詐欺に騙されたのか」(さくら舎)を出版した。「黙っていては詐欺師の思うつぼ。ありのままの真実を伝えたい」と話す。

「愛子」との出会い

高倉さんは九州大大学院で学んだ後、1986年から香川大で勤務。約35年間、法律学や社会学、哲学などを教え、学生に「物事の本質を見抜け」と説いてきた。2020年に退職し、名誉教授となった。

2024年5月2日、長年ため込んだ本や資料を整理し、空っぽになった本棚を見て寂しく思うとフェイスブックに投稿。すると、ハートの絵文字を付けた「愛子」と名乗る女性からメッセージが届いた。やり取りは弾み、退職後の生活や趣味、将来のことを伝えるうちに、LINEに移った。

「愛子」は、日本人の父と中国人の母と共に6歳で中国に渡り、アパレル会社を経営、恋人に浮気をされて破局したことなど、身の上を紹介。人懐っこさを感じさせる返答や古書を適切に引用する知性ものぞかせた。高倉さんは次第に心が傾き、「愛子の兄さんになってもらっていいですか」と伝えられ、「守ってあげたい、頼られたいという気持ちを刺激された」という。

投資話でのめり込み、被害拡大

退職して金銭に困っていなかったが、「愛子」に「一緒に勉強しませんか」と誘われ、投資に関心を持った。著名な経済学者だという「伯父」が教えてくれるとの申し出にも信頼を深めた。

やり取りを始めて3週間ほどが過ぎ、指定された口座に試しに5万円を振り込むと、残高が188万円に増えたように表示された。のめり込み、カードローンや知人らからの借金もして送金を重ねた。やがて「口座が凍結された」と解除のために約500万円を要求されるなどエスカレート。自宅マンションの所有権も手放した。

同年9月30日に190万円を送った翌日、連絡が途絶えた。被害額は925万円に上った。

今も続く影響、著書に託す思い

被害は今も影を落とす。取材中、高倉さんの携帯電話に借金の返済を求める電話が何度もかかった。一部の友人には「給湯器が壊れた」などとうそをついて借金したといい、今も関係を修復できていないという。

大学で「物事の本質を見抜け」と説いた自分がだまされた。「知識や自信があり、だまされないと思い込んでいた」と振り返る。「最初からだまそうとせず、心をがちっとつかみにきた」。著書には「愛子」とのやり取りや送金の経緯など、だまされる過程をありのままつづった。

高倉さんは「被害を受けないためのヒントにしてほしい」と語る。