妊娠中から産後1年以内に自殺した女性が、昨年までの4年間で210人に上ることが、自殺防止の調査研究を行う国指定の社団法人「いのち支える自殺対策推進センター」の発表で明らかになった。出産前後の女性は、体調の変化や子育てへの不安からうつになりやすいとされ、心の不調が最悪の場合、自殺や赤ちゃんを死なせる事態につながりかねないとして、支援体制の整備が求められている。
産後うつの実態と孤立の背景
こども家庭庁の調査によると、産後間もない母親のうち、うつの可能性が高い状態の人は1割を占めていた。核家族化が進み、地域の人付き合いも希薄になった現在、相談相手もなく親子で孤立しやすいことが背景にあるとみられる。最近では、埼玉や千葉で赤ちゃんを殺害したとして有罪判決を受けた母親が産後うつを患っていたことも明らかになっている。
行政サービスの課題と改善の方向性
2021年に施行された改正母子保健法は、産後ケア事業の実施を市区町村の努力義務とした。各自治体は、助産師が家庭を訪問して相談に乗ったり、母子で休息する場を設けたりしているが、こうした行政サービスは十分に活用されているとは言えない。申請のために窓口に出向かなければならない場合もあり、乳児を抱える親には負担になりやすいとされる。自治体には、利用者側の意見やニーズをきめ細かく把握し、オンライン手続きを導入するなど、使いやすく改善することが期待される。
父親への支援と社会全体の取り組み
支援を必要としているのは女性だけではない。1歳未満の子どもがいる父親の1割にうつの可能性があるという調査結果も出ており、仕事と子育ての両立の困難さや、男性の育児に対する職場の理解不足などが要因とみられる。妊婦健診を担う医療機関が、母親だけでなく父親のメンタルヘルスにも留意し、支援につなげていくことも検討課題だ。子どもを育み、成長を見届ける喜びを実感できる期間は限られている。子育てを楽しめる環境を社会全体でつくっていくことが求められる。



