外資による土地取得の安全保障リスク
自衛隊施設や原子力発電所の周辺、国境離島などで、悪意を持った人物に土地を取得されれば、安全保障が脅かされる。こうした恐れを放置すべきではないとの認識が広がっている。
自民党外国人政策本部は政府への提言で、安保上重要な土地の取引について「抑止効果にも留意し、強力かつ実効的な規制」を行うよう検討を求めた。外国資本を念頭に、土地購入希望者の活動実態などを事前に審査し、必要な場合は取引を停止できる「認可制」が浮上している。政府は次の国会での法整備を目指しており、実効性を高める中身にすることが重要だ。
現行法の限界と外資取得の実態
2022年に全面施行された「重要土地等調査・規制法」は、自衛隊施設の周辺などで政府に土地や建物の利用状況を調査する権限を与えた。施設の機能を妨げる行為に中止を命令できるが、事後規制にとどまっている。現実には、重要施設周辺で外資が土地を取得する動きが相次いでいる。
北海道では中国系資本が航空自衛隊千歳基地そばの土地を購入し、千歳市議会で問題となった。自民党内では、基地周辺の民家などからドローンを使って攻撃されたり、民家が諜報活動の拠点になったりするのではないか、という問題意識が高まっている。現行法には取引を止める規定がなく、不十分なのは否めない。
特別注視区域の課題
現行法では、主要な自衛隊基地といった「特別注視区域」において、一定面積以上の売買に事前の届け出を義務づけている。だが、東京都新宿区の防衛省の周辺は、市街地で経済活動に支障を来すとして区域の対象外だ。もし攻撃を受けたら、防衛政策の中枢が麻痺しかねない。区域に加えるべきではないかという指摘がある。
提言の内容と国際協定との整合性
今回の提言は、国籍に関係なく規制を強化するよう促した。日本人や日本法人の名義で土地を取得するケースに対処する。また、WTO(世界貿易機関)の関連協定は、外国企業がビジネスの拠点として土地を取得する際の不当な規制を禁じているため、提言はこの協定に沿う形となる。
提言ではさらに、水源地の森林を外資が取得した事例を踏まえ、地下水の適正な保全に向けた仕組みを求めた。宮崎県都城市では、水源地の森林が、中国とつながりのあるとされる企業に買収され、住民から不安の声が出ている。地下水の採取を巡っては、全国一律に規制する法律がない。自治体と連携して実態を把握した上で法整備の検討が欠かせない。



