会議や商談の場でプレゼンがうまい人は、何が違うのか。元日本マイクロソフト役員で、現在は圓窓代表取締役を務める澤円氏は、「プレゼンの目的は、相手に理解してもらうことではない」と断言する。スライドの見栄えやスマートな話し方にこだわるよりも、もっと別に意識すべきことがあるという。同氏の著書『思考をアップデートする全技術 うまくいく人はなぜ、考え方を柔軟に変化させられるのか?』(アスコム)より、その核心を紹介する。
プレゼン初心者が陥る最大のミス
澤氏は、年間300回を超える登壇経験を積んできた。その経験から、プレゼンで初心者がよく陥るミスとして、「話さなければならないこと」を話してしまうことを挙げる。例えば、商品のスペックや差別化のための調査データなど。しかし、これらはあくまで話し手側の都合であり、聞き手にとっては貴重な時間を割いてまで聞く必要のある情報ではない。このギャップに気づかないまま、多くの人がプレゼンを行っているという。
また、相手に「内容を理解させるため」に話すのも不十分だと指摘する。理解させることは重要だが、それだけでは良いプレゼンとは言えない。澤氏はプレゼンの目的を「聞いた人が喜んで行動すること」と定義する。オーディエンスの行動につながらなければ、プレゼンは意味をなさないという厳しい認識が必要だと述べている。
ビジョンこそがプレゼンの核心
では、相手が喜んで行動するためには何が必要か。澤氏はそれを「ビジョン」と表現する。ビジョンは「北極星」のようなもので、プレゼンによって「相手がどんな状態になれば成功なのか」を示すものだ。一度決めたらそこに向かってまっしぐらに進めるように、北極星の位置をしっかり定めることがプレゼンでは何より大切だと強調する。
逆に、北極星がフラフラしていると、相手をさまよわせることになる。プレゼンの内容がどれだけ詳細でも、聞き手が「自分はどうなるのか」をイメージできなければ、行動にはつながらない。澤氏は、このビジョンを明確に提示することが、一流のプレゼンターとそうでない人の分かれ目だと説く。
「期待」と「興味」に意識を向ける
澤氏は、プレゼンの際に意識すべきポイントとして、「期待」と「興味」を挙げる。聞き手が「このプレゼンを聞けば、自分はどう変われるのか」という期待を持てるかどうかが重要だ。また、プレゼンの内容に興味を持ってもらうために、話し手自身がまず楽しむ姿勢を示す必要があるという。
同氏は、過去に米国本社のスライドをただ翻訳しただけの酷いプレゼンを経験したことも明かしている。その反省から、聞き手の視点に立ち、彼らがハッピーになることを最優先に考えるようになった。スライドのデザインや話し方のスマートさは本質ではなく、あくまで手段に過ぎないと強調する。
「視点を独占する」スライドの作り方
効果的なスライドを作るためには、3つのポイントがあると澤氏は言う。第一に、スライドは話し手の視点を独占するためのツールであること。第二に、情報を詰め込みすぎず、聞き手が自然と話し手に集中できるようにすること。第三に、ビジュアルとメッセージを一致させ、直感的に理解できるようにすること。これらを意識することで、聞き手の行動を促すプレゼンが可能になるという。
澤氏は最後に、「プレゼンは自分を輝かせ、周りの人をハッピーにする手段」と語る。苦手意識を持つのはもったいないとし、まずは目的を「行動」に置き換えることから始めるよう勧めている。



