急速な人口減少を背景に浮上した茨城県土浦、かすみがうら両市の合併論議が視界不良に陥りつつある。合併に向けた協議に入ることを求めたかすみがうら市で市長が交代し、新市長が発信を大きくトーンダウンさせているためだ。土浦市側は、かすみがうら市の投げかけに対して一貫して慎重な姿勢を示しており、協議が始まる兆しは見えない。
「長年の悲願」表明も…新市長は「個人的な所感」と明言
かすみがうら市議会は6月16日、土浦市との合併に向けた「協議・検討の場」の設置を求める要望書を全会一致で可決した。翌17日、当時の宮嶋謙市長は土浦市役所に出向いて安藤真理子市長と面会し、協議体の設置を求めた。宮嶋氏は、土浦市との合併が「長年の悲願」だと表明し、議会が全会一致で決めた経緯を踏まえ「市民の総意として要請する」と強調した。
宮嶋氏は7月に市長を退任し、その後の対応は後任の金子敏明市長に委ねられた。金子氏は、合併という選択肢そのものを排除してはおらず、専門家による有識者会議を令和9年度に設置し、20年、30年先を見据えた市の将来像について議論する考えを示している。
「私にこうした考えはない」と突き放す
とはいえ、その姿勢は宮嶋氏ほど前のめりではない。今月27日に開いた区長との懇談会では、「長年の悲願」という宮嶋氏の見解を「個人的な所感」とした上で「私にこうした考えはない」と明言した。さらに、「市民の総意」を念頭に「市全体としての要望であることに言及できる資料はない」と突き放した。
「協議・検討の場」の設置を土浦市に要請したことについては「合併方式や新市の名称、事務事業の調整などの合併協議を行う組織の設置を求めているわけではない」と説明した。また、懇談会で配布した資料には、6月17日の要請などに関する「報道の多く」が「飛躍した内容になっている」と記し、合併ありきではないという立場を強くアピールした。有識者会議についても「土浦市との合併の可否を議論するのを主目的とするものではない」と位置づけた。
市議会の動向が焦点に
出席した区長からは、合併に関する話が「区長たちに伝わっていなかった」として「『市民の総意』ということにわだかまりがあった」との意見も出た。もともと合併論を巡る両市の温度差は大きく、宮嶋氏に比べると安藤氏の思い入れは格段に乏しかった。金子氏への市長交代を経て、結果として両市トップの姿勢が合致したというのが現状だ。全会一致の決断で宮嶋氏を後押ししたかすみがうら市議会が、金子氏とどう向き合っていくかが今後の焦点となる。