万博閉幕1年、草の根の国際交流「種」 東神楽町でケニア大使が友好確認
万博閉幕1年、草の根の国際交流「種」 東神楽町でケニア大使が友好確認

大阪・関西万博が閉幕してから13日で1年となる。158の国・地域が参加した祭典のレガシー(遺産)を今後どう生かすのか。草の根の国際交流を生んだプログラムの現場を追った。

大阪・夢洲の万博会場跡地では解体工事が進む。「多様でありながら、ひとつ」という理念を体現した大屋根リング(1周約2キロ)は、保存される200メートルを残すのみとなった。

東神楽町に残る「リング」の系譜

夢洲から北東へ約1200キロ。北海道のほぼ中央に位置する人口約9500人の東神楽町に、大屋根リングをほうふつとさせる建物がある。「はなのわ」と名付けられた複合施設は、町役場やホール、図書館が1周180メートルの円形の回廊で結ばれる。大屋根リングを手がけた同町出身の建築家・藤本壮介さんが、リングに先駆けて設計した。

今月3日、ケニアのモイ・レモシラ駐日大使は、友好の証しとして昨夏に施設敷地内へ植樹したバラの木を再訪し、「『はなのわ』もリングも、人々のつながりを体現している。ケニアと日本の交流が、このバラのようにどんどん大きくなることを願う」と語った。

マラソン大会でランナーと交流

ケニアは内閣官房の「万博国際交流プログラム」で東神楽町とマッチングされた。翌4日には町のマラソン大会でケニア出身のランナー3人が町民と走り、バーベキューを楽しんだ。

息子(9)と参加した町職員の男性(45)は「こんな小さい町でケニアのランナーが走っているのが驚き。子供たちも世界への視野が広がると思う」と話した。

プログラムの成果と課題

「万博国際交流プログラム」には全国の95自治体と、世界76か国・地域が参加した。鹿児島県三島村はギニアの伝統打楽器「ジャンベ」の演奏を学びたい「留学生」を村外から呼び込み、地域振興に役立てようとしている。国は2025年度、イベント開催などで約20億円を補助した。プログラムは同年度で終了し、今後も交流を続けるには自治体が予算を確保する必要がある。

紛争の当事者にとっても万博は重要な機会となった。ウクライナ館の館長を務めたインナ・イリナさん(47)は、閉幕後も日本に残り、NPO法人「ウクライナ文化センター」(東京)の副理事長として母国の発信を続ける。「時間がたつと、離れた国の戦争に関心を保つのは難しい。それでも、万博で生まれたつながりを思い出し、関心を持ち続けてほしい」と話した。

万博史に詳しい佐野真由子・京都大教授は「せっかく生まれた交流の『種』を途切れさせるのはもったいない。市民レベルの交流を増やせば、国際社会を多層化できる。万博は紛争を解決できなくても、『やめたい』と思う人を増やすことはできる」と語る。

横浜の園芸博へと広がる輪

万博で生まれた結びつきを、来年3月から横浜市で開催される国際園芸博覧会で広げようとする国がある。ヨルダンは砂漠から持ち込んだ「赤い砂」を万博で展示して話題を呼んだ。鳥取砂丘のある鳥取県などと交流を深め、閉幕後も鳥取や大阪などで50超のイベントに参加し、同国のダンサーや音楽家による公演や食のPRを行った。

万博のヨルダン館で政府代表代行を務めたシファ・ズグールさん(56)は「万博が縁でヨルダンに来てくれる人もおり、日本との距離が近づいた」と手応えを感じる。園芸博にも出展予定で、「日本との結びつきを示せるような展示にしたい」と語る。大阪で築かれた「フレンドシップ」(友情)が、横浜でも育まれようとしている。