アメリカのトランプ政権が8月18日、国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長とアブドゥライ・セイ上級法廷弁護士を制裁対象に指定した。これに対し、高市首相は明確な非難を表明しておらず、これまで掲げてきた「国民の生命と財産を守る」という姿勢との乖離が浮き彫りになっている。
ICC制裁の背景と日本の対応
トランプ大統領は1次政権時からICCを敵視してきた。ICCが2020年3月にアフガン戦争でのアメリカなどの戦争犯罪について捜査することを決定すると、アメリカは担当者に制裁を加えた経緯がある。今回は、ICCが2024年11月に、パレスチナ自治区ガザでの戦闘をめぐる戦争犯罪や人道の罪でイスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相(当時)に逮捕状を出したことへの報復とみられる。
トランプ大統領は昨年2月にも、ネタニヤフ首相の逮捕状発令に関連してICCのカリム・カーン主任検察官(当時)らに制裁を発動したが、当初はリストに入っていた赤根氏が除外されていた。これは日本がアメリカにとって重要な友好国であり、当時の石破茂政権から強い働きかけがあったからだ。
「配慮」の裏にある日本の立場
ICC締結国125カ国のうち79カ国は、昨年2月7日に「法の支配を脅かす」とアメリカを非難する共同声明を出した。赤根氏も「何百万人もの罪のない犠牲者から正義と希望を奪おうとするもの」と批判したが、日本は共同声明には参加しなかった。この日はワシントンDCで日米首脳会談が行われており、アメリカへの「配慮」があったとされている。
そうした「配慮」は、このときばかりではない。日本は世界で唯一の被爆国として、その悲惨さを十分に認識し、世界に訴えていくべき責務を負っている。にもかかわらず、核兵器禁止条約に署名・批准をしておらず、過去3回の締結国会議へのオブザーバー参加も見送った。アメリカの「核の傘」に日本が依存しているというのが主な理由だが、アメリカへの忖度が足かせとなっている。
「やった感」演出と現実の乖離
8月3日の高市首相の熊本地震の被災地への視察には“撮影班”が同伴し、動画が作成された。木原稔官房長官の説明によると「視察の様子を国民にわかりやすく伝えるため」という。BGMまでつけて作り込まれた動画は、高市首相の「やった感」を盛り上げるものだったことは間違いない。
自衛隊のヘリコプターから爆発事故で壊れたイオンモール熊本の建物に祈りを捧げたのも、「至れり尽くせり」などと高市首相にひたすら感謝の意を示した被災者との面会も、「国民の生命と財産を守る高市首相」という“ドラマ”の一場面だったのかもしれない。
しかし、そのドラマは完成しそうにもなくなった。トランプ政権のICC制裁により、高市首相の「言動不一致」と「弱腰外交」が改めて問われる結果となっている。



