環境アセスメント合意の背景
国土交通省と佐賀県は17日、西九州新幹線で未整備となっている武雄温泉駅(佐賀県武雄市)から九州新幹線までの区間(約50キロ)について、整備に必要な環境アセスメント(環境影響評価)をルートを特定せず行うことで合意した。来年度から3~5年程度をかけて実施する。県は財政負担などを理由に未整備区間の整備に慎重姿勢を取っていたが、アセス実施の合意により、整備に向けた議論が動き出すことになる。
知事と次官の11回会談が転機に
「我々の思いを水嶋次官や国交省が受け止めてくれた」。佐賀県の山口祥義知事が国交省の事務方トップの水嶋智事務次官と並んだ記者会見で笑顔を見せた。2018年に国が新幹線と在来線を直通運行できる「フリーゲージトレイン」の開発を断念したことから、国と佐賀県の議論は停滞。国は2020年に整備方式を絞らずにアセス実施を提案したが、県側は、財政負担が大きく、在来線とは異なるフル規格での整備を視野に入れたものだとして、これを拒否していた。昨年10月に始まった山口氏と水嶋氏とのトップ会談が転機に。11回を重ね、信頼関係を醸成させた。
今後の課題と専門家の指摘
合意は、財政負担や在来線の維持などについては両者とも今後の議論に委ねるとし、不明な点は多い。波床正敏・大阪産業大教授(交通計画)は、「アセスを進めるにはルートを絞る必要がある。議論を円滑に進めるため、国も財政支出をして負担軽減に取り組む覚悟が必要だ」と指摘した。
沿線自治体の反応
整備を求める沿線自治体などからは、今回の合意に期待の声が相次いだ。「議論を尽くしていただいた2人に感謝したい」。長崎県の平田研知事は報道陣を前にこう喜んだ。合意書では、佐賀県内の整備費を長崎県も負担することの協議が盛り込まれた。平田氏は「負担根拠や財政措置など論点が解決すれば否定されるものではない」としつつ、「県民の利益をしっかりと判断し、協議の中で主張していく」と話した。運行主体のJR九州も「大きな前進だと受け止めている」と合意を歓迎するコメントを発表。佐賀県武雄市観光協会の山下裕輔会長は「地方活性化のため早く整備の議論が進んでほしい」と願った。
県内の温度差
ただ、佐賀県の中でも整備への温度差はありそうだ。佐賀市のJR佐賀駅を利用していた同市の50歳代男性は、「佐賀から博多までは特急で十分だから、必ずしも新幹線が必要ではない」と話した。



