高市首相が国連で旧敵国条項の削除に言及 中国の批判に利用される恐れ
高市首相が国連で旧敵国条項削除に言及 中国批判に利用も

高市早苗首相は就任後初めての国連総会の一般討論演説で、第2次世界大戦の敗戦国を対象とした国連憲章の「旧敵国条項」の削除に言及した。首相の強い意向があったという。中国の「新型軍国主義」との日本批判に利用される恐れがあり、政府内からは取り上げる必要はなかったとの声も漏れる。

旧敵国条項とは何か

旧敵国条項は、第2次世界大戦で連合国と戦った日本やドイツなどを念頭に、国連憲章に設けられた規定である。「旧敵国」が再び侵略政策をとった場合、国連安全保障理事会の許可なしに軍事的な措置をとれる内容を含む。1995年の国連総会で「時代遅れ」とされ、日本政府は「死文化」したとの立場をとる。さらに2005年の国連総会特別首脳会議の成果文書で、中国を含む加盟国が削除方針で一致したが、国連憲章改正のハードルの高さもあって、削除されていない。

首相が国連総会で訴えた内容

「(旧敵国条項は)早急に削除されるべきだ。70年間にわたり、国連の取り組みに大きく貢献してきた日本の誇りと名誉にかけて強く申し上げる」。首相は22日、米ニューヨークの国連本部で訴えた。

かつて小泉純一郎首相(当時)が2005年、日本の国連安全保障理事会常任理事国入りを目指す国連改革の一環として削除を訴えたが、その後の歴代首相の国連総会演説で取り上げていない。官邸幹部は「首相の思いが強かった。中国の反発も想定内だ」と語る。

中国側の反発と日本側の応酬

25年11月の首相の台湾有事をめぐる答弁以降、中国は高市政権が軍備増強を進め、安全保障上の脅威となっているとする「新型軍国主義」の主張を始めた。

在日本中国大使館は25年11月、旧敵国条項に触れ、第2次世界大戦の敗戦国に「安保理の許可を要することなく、直接軍事行動を取る権利を有する」などと投稿。旧敵国条項は、「軍国主義国家」への対処のために残されていると主張している。

今回の首相の演説は、中国への「反論」のために盛り込まれた。外務省幹部は、「日本の立場を示して、事実を言うのは大事だ」と狙いを語る。

だが、演説を受けて、中国外務省の郭嘉昆副報道局長は、旧敵国条項は「再び軍国主義が国際平和の脅威となることを防ぐため、重要な現実的意義がある」と反発。これに対し、日本外務省はX(旧ツイッター)で、「死文化」の認識を規定した1995年の国連決議には中国も賛成しているとして、「中国が決議を尊重することを期待する」と応酬した。