夕張市清水沢地区で炭鉱遺産を活用したまちづくりを進める一般社団法人「清水沢プロジェクト」が、発足から10年を迎えた。代表理事の佐藤真奈美さん(47)は、地域とともに歩んだ活動を振り返り、炭鉱遺産を地域の誇りとして価値づける取り組みが浸透しつつあると語る。
エコミュージアムの実践と信頼構築
同プロジェクトは、地域全体を博物館、住民を学芸員とみなす「エコミュージアム」の理念を掲げて活動してきた。佐藤代表理事は「炭鉱遺産を地域の誇りや資源として価値があるという見方が浸透しつつあり、地域と一定の信頼を築くことができている」と手応えを語る。
2025年には「住まいのまちなみコンクール」(住宅生産振興財団など主催)で「住まいのまちなみ賞」を受賞。街並みそのものと、それを地域資源としてとらえる実践が全国的に評価された。佐藤さんは「地域の皆さんと受賞を祝う会を開き、喜び合った」と述べている。
「清水沢まちあるき」130回、延べ1000人以上参加
市内を巡る「清水沢まちあるき」は月1回約2時間のペースで続けられ、2026年7月25日で130回を迎える。法人化前の2015年に始まり、延べ1000人以上が参加。参加者には夕張出身者が多いが、炭鉱遺産ファンも含まれる。佐藤さんは「参加者が自ら調べて資料をつくり、他の参加者に配るなど学芸員のような存在になっている。地域内外の人が出会う場として役割が広がった」と説明する。
アート・イン・レジデンスとコミュニティゲート
同プロジェクトは、国内外から芸術家を招き滞在中の創作活動を支援するアート・イン・レジデンス事業にも取り組む。夕張市から旧炭鉱住宅の無償貸与を受け、炭鉱遺産の案内や芸術活動を行う拠点「清水沢コミュニティゲート」を整備。佐藤さんは「アーティストと地元の人たちとの橋渡し役を務め、地域の中と外をつなぐ場に成長した」と語る。
「夕張の記憶ミュージアムルーム」新設
コミュニティゲートの一室には、2024年6月に「夕張の記憶ミュージアムルーム」が新設された。炭鉱の歴史を長く記憶にとどめるための常設展示スペースで、炭鉱組合の解散記念誌など市民から寄贈された貴重な資料が多数含まれる。また、夕張高校の生徒がスタッフとして働いている。
今後の課題と目標
人口減少や街並みの変化が進む中、佐藤さんは「現在と未来の住民、そしてそれに関わる人たちが誇れる街をつくるのが目標。まず私たちの世代が実践し、次の世代に伝えていく。そのためには、地域の歴史と文化にきちんと目を向けなければならない」と強調する。現状の会員数は60人で、慢性的な資金不足が続いており、「共感してくれる方を増やしていきたい」と語っている。



