化成、全社データ基盤の整備とAI活用で年間6.5万時間の工数削減を達成
化成、データ基盤とAIで年間6.5万時間削減

化成は、全社データ基盤の整備とAI活用により、従来10年かかっていた素材開発期間を1年に短縮するなどの成果を上げている。また、経費精算では年間6.5万時間の工数削減を達成した。同社のDX戦略を、執行役員(DX推進)デジタル共創本部長の芝田浩史氏と、IT統括部の小山氏への取材に基づき、その実践プロセスをひも解く。

「もはや化学会社にとどまらない」全社データ基盤の構築

化成が強化しているのは、自社が持つ技術や知見、ノウハウを集約したデータ基盤を構築することだ。1922年に創業した同社は、マテリアルだけでなく、住設やヘルスケア領域など多角的に事業を展開しており、「もはや化学会社にとどまらない」企業に成長している。異なる領域の技術や人材、ノウハウを組み合わせることが、同社の成長を支えてきた。

しかし、社内にどのような技術や知見があるのかを見つけ出し、事業に結び付ける過程では、人脈や個人の知識に頼る面があったという。そこで同社は2021年から全社的なデータ基盤の整備を推進。社内に散在していたデータや知見を集約し、技術やノウハウを可視化・活用できる環境の構築を進めている。

現在ではRAG(検索拡張生成)などのAI技術を導入し、これまで10年かかっていた素材開発期間を1年に短縮するような成果も現れているという。

ツールを入れるだけでは不十分 「適切なハンドリング」とは

同社はデータ基盤の活用が、AIの利用で加速すると見ている。芝田氏は「単にAIを通せば必ず成功するわけではない」としながらも、人が長年かけて探してきた技術や事業の組み合わせを、選択肢として迅速に提示できる点に期待を寄せる。

全社でデータやAIの活用を広げるためのルール整備も欠かせない。芝田氏はシステム利用を車の運転になぞらえて「アクセルとブレーキ、そしてハンドル」の重要性を指摘する。

「社員が自律的にAIやツールを使って『アクセル』を踏む一方で、悪質ツールの排除やセキュリティリスクを防ぐ『ブレーキ』が不可欠です。そして同時に、複雑なシステムでもユーザーが迷わず正しく操作できるよう『ハンドル』をうまくさばけるような支援が求められます」(芝田氏)

AIの活用の推進においても、日常的な社内システムの利用でも、現場がルールを守り、迷わず操作できるように導く「適切なハンドリング」が求められる。同社は経費精算において、年間6.5万時間の工数削減を達成している。