気温が下がり、お風呂で温まるのが気持ちよい季節となった。スポーツや芸術、食欲の秋を満喫し、入浴を楽しむ人も多いだろう。しかし、高齢者施設では入浴の頻度と、入居者の「やりたいこと」の両立に悩むこともある。
入浴1回分を有効活用する「ヒルズスタイル」
老人ホーム「ウェルケアヒルズ馬事公苑」では、週3回の入浴機会を設けている。ただ、入居者の中には「お風呂より自分のやりたいことを優先したい」「面倒なので2回で十分」という人もいる。そこで同施設は、週の入浴を2回に減らし、空いた1回分(30分)を別のサービスに充てる試みを開始した。名付けて「ヒルズスタイル」だ。
スタッフにとってはサービス内容が変わるだけで業務時間は増えず、入居者も遠慮なく「これやりたい」と希望を伝えられる。例えば、スタッフが付き添ってのショッピングや植物の手入れなど、自由で自分らしい時間を過ごすことができる。
美術館巡りや自宅訪問で元気を取り戻す
「やりたいこと」が1時間以上かかる場合は、複数回分を合わせて計画することも可能だ。実際に、スタッフと美術館に出かけた入居者もいる。若い頃から美術館巡りが好きだったが、病気による障害で外出をあきらめていたという。久しぶりの美術鑑賞を楽しみ、「またヨーロッパの美術館にも行きたい」と意欲を取り戻した。
また、久しぶりに自宅に帰った入居者もいた。病状が悪化し食事が進まない日が続いていたが、自宅でゆっくり過ごして思い出に浸った後、大好きなすし店に立ち寄ると1人前を完食。付き添ったスタッフにとってうれしい驚きだった。この日を境に食欲が戻り、今は元気に毎日を過ごしているという。
特別ではないが、自分で選んだ大切な時間
どの例も、特別かなえるのが難しいことではない。しかし、入居者自身が自分の意思で選んだ大切な時間だ。年齢を重ねて遠ざかっていた趣味や習慣も、サポートがあれば取り戻せるはずだ。同施設は「入居者には自分らしく自由に暮らしてほしい」という思いを、ヒルズスタイルで実現している。