ナビ・ピレイ氏へのノーベル平和賞授与が決まった9日、米国は国際刑事裁判所(ICC)への制裁を発表した。「法の支配」の重要性を説く平和賞発表の直後に、大国の「力による支配」を見せつけられる現実をどうとらえれば良いのか。国際刑事司法・国際法が専門の越智萌・立命館大学大学院国際関係研究科准教授に聞いた。
大国による「法の支配」の例外扱い
越智氏は、米国のICC制裁について「大国が『法の支配』の例外扱いを強要している」と指摘する。平和賞の授賞理由が「平和と国際法の推進に尽力」であることと対照的に、米国の行動は国際法の枠組みを自国に都合よく適用しようとするものだという。
ピレイ氏は、戦争犯罪やジェノサイドなど大規模な犯罪の処罰に一生をかけて携わってきた法律家だ。力ではなく外交や法律で戦争犯罪を処罰することの重要性を説き、不正義を処罰するという最も基本的な法の機能を改めて認識させるものだと越智氏は評価する。
弱者への不正義に対峙してきたピレイ氏
戦争や紛争では、国同士の力関係が注目されがちだ。だが、巻き込まれ苦しむ人にこそ目を向ける必要がある。ピレイ氏はそうした視点で、特にマイノリティー(少数派)や弱者への不正義に対峙してきた。
1990年代、ルワンダ国際刑事裁判所での活動など、ピレイ氏の長年の取り組みはジェノサイド議論の土台を築いたとされる。
国際社会への影響
米国の制裁発表は、ICCの活動に直接的な圧力をかけるものだ。トランプ政権によるICCへの圧力は、赤根所長への制裁としても及んでいる。
越智氏の指摘は、国際法の普遍性を掲げるICCと、大国の国益優先の姿勢との間にある根本的な緊張関係を浮き彫りにしている。