国際的な取引の大半は、米ドルを介して決済される。そんなドルを「武器」として用い、経済戦争を仕掛けてきたのが、ほかでもない米国だ。ただ、その使いすぎは効果を自ら弱めるだけでなく、ドルそのものの地位をも脅かしかねない。
対イラン圧力の切り札としてのドル
対イランの軍事作戦や外交交渉が行き詰まる中、米国がすがったのが、通貨ドルを使った圧力だ。
「米国の制裁が及ばない者は、誰一人としていない」
米政権が対イラン作戦の「経済的Dデー(決戦の日)」と位置づけて追加制裁を発表した8月24日、財務長官ベッセントは記者会見でそう息巻いた。
どんな国であれ、今後、イランと取引をすれば、ドル中心の国際金融ネットワークから締め出すと警告。ドルを材料にした他国への圧力を通じて、イランの資金力をそごうというのだ。
制裁手段としてのドルの歴史
米国がドルを経済制裁の手段とするようになった転機は、2001年9月11日の同時多発テロにさかのぼる。大統領のジョージ・W・ブッシュは政府の各機関に、さらなる攻撃を防ぐため、ありとあらゆる手段で「対テロ」に臨むよう指示を出した。
財務省でこの役割を担ったのは、6人で練った制裁案だった。目を付けたのは、ドルの「力」である。
この連載「チョークポイント・クライシス」では、ホルムズ危機が突きつけた日本の「急所」から、中国の「マラッカジレンマ」、海底ケーブルへの脅威、半導体の「ホルムズ海峡」問題まで、世界の供給網の脆弱性を深掘りしてきた。今回のテーマは、ドルを巡る通貨戦争の深層だ。



