韓国では10年ほど前、10代後半の若者の結核罹患率の高さが問題となっていたが、ある対策によって大きく改善したという。医療インフラが整った先進国でも、悪条件が重なると感染が広がる恐れがあることを示す事例だ。
世界的に猛威を振るう結核
結核は「過去の病気」と思われがちだが、現在もなお流行している。WHO(世界保健機関)の推計では、2024年には1070万人が新たに罹患し、123万人が亡くなった。単一の病原体による死因としては世界で最も多い。
日本も新規結核患者数が10万人あたり10人以下の「低蔓延国」になったのは21年のことだ。BCGワクチンの効果は、主に乳幼児の重い結核を防ぐものであり、その持続期間は一般的に「10~15年」とされる。
ミュージシャンが語る感染の過去
2025年9月、ソウルを横切って流れる漢江沿いの公園で開かれたロックフェスティバル。韓国のグラムロックバンド「Crackshot」のドラマー、ダニー・リーさん(35)は華麗なスティックさばきで集まった数千人の観客を沸かせた。
そんなエネルギッシュな彼だが、10年ほど前に結核に感染して苦しんだ過去があった。今年6月に取材を申し込んだ。ソウルで、アーティストや外国人が多く訪れるエリアにあるカフェに現れた彼は、あいさつを交わすと「少しだけ日本語も勉強したんです」とはにかんだ。フェスのときとは違い、物腰柔らかで控えめな印象だった。ただ、肩や腕には厚みがあり、結核を患った過去を感じさせない。
徴兵期間中に判明、中学時代にも感染
リーさんは14年12月23日、徴兵制で入隊。それから2週間ほど過ぎた頃、午前の訓練を終えると熱が出た。数日間、医務室で過ごしたが、熱は上がったり下がったりを繰り返し、ソウルの南にある城南市の国防部の「国軍首都病院」に移された。隔離病棟で1週間ほど過ごした後、結核の陽性が分かった。
訓練所は、一部屋15人の共同生活。部屋に川の字のように布団を並べて寝た。朝6時に起床し、運動場で点呼と体操をして、みんなで朝食を食べてから8時半ごろに訓練がスタートする。昼食や休憩を挟んで午後にも訓練があり、18時ごろに夕食。22時ごろには就寝、という生活だった。
実は彼は、入隊前にも結核にかかったことがあった。中学3年の頃だ。ソウルの中学に通っていた夏のことだったという。



