中央アジアの重要鉱物巡り米国が投資加速、中国に対抗
中央アジアの重要鉱物巡り米国が投資加速、中国に対抗

21世紀の資源を巡る覇権争いは、石油や天然ガスなどの化石燃料だけでなく、半導体、航空宇宙、防衛産業などに不可欠な「重要鉱物」を巡る競争に拡大している。中国が採掘から精製、加工に至る供給網で存在感を示す中、米国や欧州が代替供給源として関与を強めているのが、豊富な資源を抱える中央アジアだ。

米国、調達多角化へ投資加速

カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギス、トルクメニスタンの中央アジア5か国は複雑な地質形成の歴史を経て、石油・天然ガスからウラン、銅、クロム、亜鉛など多様な鉱物資源を有する。ロシア、中国、欧州、中東を結ぶ地理的要衝でもあり、資源と地政学的位置が各国を引き寄せている。

象徴するのが、カザフのタングステン開発だ。米紙ニューヨーク・タイムズによると、2025年9月、米国のラトニック商務長官とカザフのカシムジョマルト・トカエフ大統領がニューヨークで会談した。議題がカザフ東部のタングステン鉱床に移ると、トランプ大統領が電話で協議に加わった。米側が求めたのはカザフの資源開発に進出する米企業への支援だ。

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その後、米カザフの協力は具体化した。25年11月、米投資会社とカザフ国営鉱山会社は二つの鉱床を共同開発する契約を発表した。総事業費は約11億ドル(約1750億円)。カザフ国内での加工も計画されているという。採掘から加工まで供給網の構築を目指す。

米英メディアは、正式契約に先立ち、トランプ氏の長男ジュニア氏や次男エリック氏らが関わる企業がプロジェクト関連企業に投資していたと報じた。米政府の資源外交とトランプ一族の距離の近さは利益相反を巡る批判を招いている。

供給元の偏在とカザフの潜在力

タングステンは融点が3400度以上で高い硬度を誇る。航空宇宙、電子機器、半導体製造、防衛関連など広範囲に利用される。ロシアによるウクライナ侵略で各国の弾薬生産能力が注目される中、軍需産業を支える鉱物としても重要性が改めて認識された。

問題は供給元の偏在だ。米地質調査所(USGS)の推定によれば、25年の世界のタングステン鉱山生産量は約8万5000トン。中国は約6万7000トンで世界の約79%を占めた。

米中覇権争いが激化する中、重要鉱物の供給源を多角化させたい米国が目を付けたのがカザフだ。カザフの25年のタングステン生産量は約2400トンで約3%だが、カザフ政府は国内のタングステン資源を200万トン超と推定する。国際的にも世界有数の潜在力を持つとされる。

米国の関与強化と他国の動き

米国は中央アジアへの関与強化を急ぐ。米国と中央アジア5か国の枠組み「C5+1」はバイデン政権下の23年に首脳会談を開き、重要鉱物を含む経済・安全保障協力の強化で合意した。トランプ政権も枠組みを継ぎ、25年11月には5か国首脳をワシントンに招いた。重要鉱物を含む経済協力が相次ぎ発表され、米国の中央アジア政策は投資段階へと重点を移しつつある。

今年2月には米国際開発公社とウズベクが鉱物資源を巡る協定を締結。探査、採掘、加工などを含み米国の関与拡大を示すものだ。

国土面積で日本の約7倍あるカザフは石油や天然ガスに加え世界最大のウラン生産国でもある。22年の生産量は約2万1280トンで世界の生産量の43%を占めた。ウズベクも主要なウラン生産国だ。潜在力も高い。経済協力開発機構(OECD)によれば、中央アジアは世界の埋蔵量でマンガン鉱石の39%、クロムの31%、鉛の20%、亜鉛の13%を占める。

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中露は米欧に先行し、既に関係を構築している。中国は習近平国家主席が提唱した「一帯一路」構想を通じ、鉄道やエネルギーなどインフラ整備に加え、鉱山開発への投資を拡大させてきた。ロシアは旧ソ連構成国の中央アジアと歴史的、人的、経済的な関係が深い。露主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構」(CSTO)にはカザフ、キルギス、タジクが加盟し、ロシアの軍事施設も置かれている。

関係強化を図るのは米国だけではない。欧州連合(EU)は25年11月、ウズベクでEU・中央アジア経済フォーラムを開き、協力を確認した。カザフはEUが重要原材料に指定する34種類のうち21種類について輸出可能な資源を持つ。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など湾岸諸国も中央アジアへの投資に躍起だ。日本も政府開発援助(ODA)を含む政府支援や民間投資、人材育成などで関係を築いてきた。