ウクライナ汚職問題:戦時中も止まらない摘発、その背景と社会への影響
ウクライナ汚職問題:戦時中も止まらない摘発の背景

ロシアによる侵攻が続くウクライナで、汚職事件が頻発し、国家の存亡をかけた戦時中にもかかわらず摘発が止まらない。津田塾大学の松嵜英也准教授(ウクライナ政治)は、その背景にソ連時代からの政治文化とオリガルヒ(新興財閥)の構造があると指摘する。

戦時下でも続く汚職摘発

2025年、前大統領府長官のイエルマーク氏(当時)に汚職の疑いが浮上し、注目を集めた。キーウ近郊の高級住宅建設事業に関する4億6千万フリブニャ(約16億5千万円)の資金洗浄事件で、現在も捜査が続いている。ウクライナ国家汚職対策局によると、2026年に入ってから5月末までに300件以上の汚職事件の捜査が開始された。対象は政治家、官僚、裁判官と多岐にわたる。

国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」の2025年調査では、ウクライナの腐敗認識指数は182カ国・地域中104位で、EU諸国と比較して低い水準にある。

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汚職がなくならない理由

松嵜准教授は「ソ連時代から、法の支配よりも人脈が重んじられる政治文化が強くあった」と説明する。独立後、法制度は整備されたが、個人的な人間関係に基づく資源配分の慣行は残った。そこにオリガルヒが政治、司法、メディアを取り込み、国家資源へのアクセスを確保する構造が重なり、汚職が政治経済秩序の一部となった。

しかし、松嵜准教授は「政治家や官僚のモラルの問題とするのは単純な見方」と強調する。賄賂や縁故、便宜の供与で物事が進む環境では、一人だけルールを守ろうとしても損をし、上司や同僚との関係も悪化する。このため、汚職がもたらす一種の「均衡」が社会に安定をもたらす側面があるという。

戦時中の摘発と社会への影響

戦時中にもかかわらず摘発が続く理由について、松嵜准教授は「国際社会からの支援継続のため、汚職対策が不可欠である」と指摘。欧州連合(EU)加盟を目指すウクライナにとって、汚職撲滅は重要な課題であり、戦時下でも改革を進める姿勢を示す必要がある。一方で、摘発が政治的な対立を激化させるリスクもはらむ。

汚職問題の根深さは、単なる法律違反ではなく、社会構造そのものに起因する。戦時下という非常事態が、この構造を変革する契機となるか、あるいは既得権益を強化するかは、今後の動向次第だ。

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