トランプ前米大統領の関税政策が日本経済に与える影響は甚大で、最悪の場合、国内総生産(GDP)を最大1.4%押し下げる可能性がある。第一生命経済研究所の試算によれば、自動車や鉄鋼などへの追加関税が実施されれば、輸出減少や設備投資の縮小を通じて、2025年から2027年にかけて累積で約7兆円のGDP損失が生じる見通しだ。
自動車関税が直撃、日本経済の要を揺るがす
トランプ氏は選挙公約で、全ての輸入品に10%の関税を課す方針を示している。特に日本にとって打撃が大きいのは自動車分野だ。日本から米国への輸出の約3割を自動車が占め、追加関税が課されれば価格競争力が低下し、輸出量が大幅に減少する。第一生命経済研究所の主席エコノミスト、熊野英生氏は「自動車産業は裾野が広く、部品メーカーを含めた雇用や投資に深刻な悪影響が及ぶ」と指摘する。
鉄鋼・アルミにも追加関税、サプライチェーンに混乱
トランプ政権は前回、鉄鋼とアルミニウムに25%の関税を課したが、今回はさらに拡大する可能性がある。日本鉄鋼連盟のデータによれば、日本から米国への鉄鋼輸出は年間約200万トンに上り、関税が再び強化されれば、国内鉄鋼メーカーの収益を圧迫する。また、アルミニウム分野でも同様の影響が懸念され、自動車や建設資材など川下産業へのコスト転嫁が避けられない。
GDP押し下げは1.4%超、輸出減少が主因
第一生命経済研究所のシミュレーションでは、トランプ関税が全面発動された場合、日本の実質GDPは1.4%超押し下げられる。これは輸出の減少が直接的な要因で、間接的には企業の設備投資抑制や雇用減少が国内消費を冷え込ませる。特に、自動車関連の輸出が半減すれば、GDP損失はさらに拡大する可能性もある。
日本政府の対応は限定的、交渉が鍵に
日本政府は関税回避のため、米国との二国間交渉を模索しているが、トランプ氏の強硬姿勢は変わらない。経済産業省の幹部は「日本の自動車メーカーが米国に工場を建設しても、関税が免除される保証はない」と述べ、不透明感が増している。また、日本は米国に代わる輸出先として、欧州連合(EU)や東南アジア諸国連合(ASEAN)との経済連携強化を急ぐが、短期的な代替は難しい。
世界経済への波及リスクも
トランプ関税は日本だけでなく、世界経済全体に悪影響を及ぼす。国際通貨基金(IMF)は、米国の関税引き上げが貿易戦争を激化させ、世界GDPを0.5%押し下げると警告している。日本は中国や韓国などアジア諸国とのサプライチェーンで結ばれており、関税の影響が連鎖的に広がるリスクがある。第一生命経済研究所は「日本は輸出依存度が高く、保護主義の波に最も脆弱な国の一つ」と分析する。



