かつて日本の強みだった多くの産業が、急速に中国に追い抜かれている。なぜ日本はあっさりと逆転されたのか。拓殖大学海外事情研究所教授でジャーナリストの富坂聰氏は、その根底にある中国の「容赦なきトライ&エラー」の姿勢を指摘し、「日本は彼らの失敗を笑っている場合ではない」と警鐘を鳴らす。ノンフィクションライターの山川徹氏が、新著『おそるべき「中国一強」時代』(小学館新書)の刊行を機に富坂氏に聞いた。
「見たい現実しか見ない」日本の姿勢
中国政府の失敗に関する記事、特にインドネシアの高速鉄道「Whoosh」の想定を下回る乗客数や約1兆円に膨れ上がった事業費の膨張が、日本のウェブニュースで頻繁に取り上げられている。この動きについて富坂氏は、「こうした報道が好まれる背景には『見たいものしか見ない』という意識がある」と分析する。
富坂氏は、2011年に浙江省温州市で発生した高速鉄道の衝突・脱線事故(死者40人、負傷者200人)を例に挙げる。この事故後、中国は事故車両を埋めたというニュースが日本で大きく報じられ、今なお中国の技術力の低さの象徴として語られる。しかし、その後の中国の高速鉄道は大きな事故を起こしておらず、鉄道網は世界最大に成長した。運営能力も非常に高い。これは、砂漠、零下の雪原、高地など多様な気象条件や地形で高速鉄道を運行させてきた膨大なデータの蓄積の結果だと富坂氏は説明する。
中国の産業発展を支える「容赦なきトライ&エラー」
中国の産業の特徴は、一つひとつの失敗や事故が次の産業の発展につながっている点にある。高速鉄道だけでなく、今や世界一となったEV(電気自動車)や造船も、激しい淘汰の上に成り立っている。富坂氏は「根底にあるのは容赦なきトライ&エラーだ」と強調する。
日本の造船業が中国に抜かれた理由についても、同様の構図が見える。中国は大量の船舶を建造し、その過程で多くの失敗を経験しながら技術を磨いてきた。一方、日本は慎重すぎるあまり、革新のスピードで遅れを取った。
すでに中国に笑われる国になっている日本
富坂氏は、「日本はすでに中国に笑われる国になっている」と警告する。中国の失敗ばかりを報じる日本のメディアの姿勢は、中国から見れば「現実を見ようとしない滑稽な姿」に映っているという。中国の産業は、失敗を恐れずに挑戦を続けることで急速に成長しており、日本がその姿勢を学ばなければ、ますます差が開く一方だと指摘する。
日本が追いつく唯一の方法:まずは中国を師とすること
富坂氏は、日本が中国に追いつくためには、まず中国を師とすることが必要だと主張する。具体的には、中国の「トライ&エラー」の精神を取り入れ、失敗を恐れずに新技術に挑戦する姿勢が求められる。また、中国の成功事例だけでなく、失敗から学ぶプロセスにも注目すべきだと述べている。
山川氏との対談を通じて、富坂氏は「日本が中国の失敗を笑っている場合ではない。むしろ、その失敗から何を学ぶかが重要だ」と締めくくった。



