トランプ政権のスポーツ介入にIOC懸念、W杯の事例で五輪中立性に警鐘
トランプ政権のスポーツ介入にIOC懸念、W杯事例で警鐘

スペインの優勝で幕を閉じたサッカーのワールドカップ(W杯)北中米3か国大会。これに強い関心を寄せていたのが国際オリンピック委員会(IOC)だ。といっても選手の活躍や試合結果ではなく、ホスト国のひとつ、米国のトランプ政権がスポーツの独立性をどう尊重するか、という観点からだった。

組織委会長の発言に「疑問符」

IOCのカースティ・コベントリー会長にとって、任期初の夏季大会となるのが2028年ロサンゼルス五輪。これまでロサンゼルス大会組織委員会はIOCに対し「連邦政府とも密に連絡を取っており、全く問題はない」(ケーシー・ワッサーマン会長)と強調してきたが、W杯期間中に浮上した複数の事例は、それに疑問符を付けるに十分だった。

入国拒否と選手処分への圧力

最初の懸念は、ソマリア人初のW杯審判を務める予定だったオマル・アルタン氏が、6月6日の米国到着時に、「審査上の懸念」を理由に入国を拒否されたこと。アルタン氏はアフリカサッカー連盟から「最も優秀な男性審判」に選ばれた実績を持つ。フロリダ州のマイアミ空港で11時間にわたる事情聴取を受けた末のことで、国際サッカー連盟(FIFA)が任命した審判員が入国拒否に遭うのは異例だ。

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大会期間中の事例は、米国代表選手に対する出場停止処分の執行猶予。7月1日に行われた決勝トーナメント1回戦で、米国代表FWのフォラリン・バログン選手が、ボスニア・ヘルツェゴビナの選手の足首をスパイクで踏みつけ、一発退場となった。規定では次戦も出場停止だったが、一転1年間の執行猶予となり、ベルギーとの決勝トーナメント2回戦に出場可能となった(1―4で米国が敗退)。事前にトランプ大統領が、FIFAのジャンニ・インファンティノ会長に、「説明を求める電話をした」ことが明らかになっている。

入国拒否が五輪関係者に及ぶ可能性

IOC関係者が以前から懸念を表明してきたのが、選手・関係者の入国問題だ。トランプ政権は現在「安全保障上の理由」で、39か国・地域からの入国を禁止または制限している。全面禁止は12か国を超え、イラン、ソマリア等が含まれる。ただし、サッカーW杯やオリンピックなど、主要なスポーツイベントに参加する選手については、禁止措置の「対象外となる可能性」も示唆している。W杯へのイランチームの参加が、入国への厳しい制約付きではあったが認められたように、だ。

歴史上1980年、84年のボイコットの応酬などを経験してきたIOCは、選手の大会参加が政治的な意図で左右されることへの危機感が強い。それはIOCが掲げる政治的中立性や参加の普遍性など、スポーツの根幹に関わることだからだ。

IOCの厳しい対応と米国へのメッセージ

2025年の世界体操選手権では、開催国インドネシア政府がイスラエル選手団へのビザ発給を拒否した。国際体操連盟の管轄大会だが、コベントリーIOC会長がインドネシア政府への制裁を表明。36年夏季五輪招致の対話などを凍結し、各国際競技連盟にも、インドネシアで国際大会を開催しないよう勧告した。IOCの厳しい対応は、今年10月末からダカール・ユース五輪を開催するセネガルなど、同様にイスラム教徒の比率が高い国への警告であると同時に、ロサンゼルス五輪を控える米国へのメッセージ、という意味合いもあると見られてきた。

IOCはまた、7月の理事会でロシア選手団の正式参加を暫定的に容認。これまでは個人資格での五輪参加のみ認めてきたが、これで国際情勢や紛争などのしがらみを超え、選手参加の普遍性を担保する姿勢に戻ったとも言える。

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その背景にあるのが、米国によるイラン攻撃など、国際情勢の複雑化だ。米国選手は現在に至るまで個人資格参加などの対象となっておらず、整合性を取る必要が生じ得ること、ロサンゼルス五輪開催国の米国に「制裁」を科すのは得策ではないこと――などの事情が見え隠れする。

「もちろん我々は強い関心を持って注視している」。コベントリー会長は6月の記者会見で、トランプ政権による対応への懸念を問われそう答えた。FIFAの審判に対するような入国拒否が、五輪の関係者に及ぶ可能性。それは五輪の中立性を直撃することになる。