太陽光発電の普及がもたらす地政学的リスクとロシアの戦略
太陽光発電の普及がもたらす地政学的リスク

地球温暖化防止に向け、二酸化炭素を排出しない太陽光発電への関心が高まっている。市場規模は2015年には8兆円に拡大するという予測もあり、日本企業にとっても追い風だ。しかし、この話には裏がある。

世界をリードする国は従来、日米欧の先進国が中心だったが、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)を中心とした新興国の動向が無視できなくなっている。G8からG20への移行もその表れだ。新興国の経済成長が進むと、エネルギー資源や食料の不足が懸念され、資源や農産物の豊かな国が有利になる。

資源が稀少化すればインフレが起こり、その結果、太陽電池の需要が高まる。太陽光はどの国にも平等に降り注ぎ、コストもかからないため、資源の乏しい日本にとっては大きな恩恵となる。

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太陽電池の普及で困る国

一方、太陽電池の普及に困る国もある。原油国は将来的に石油が枯渇するリスクを抱えるが、中東産油国は政府系ファンドで投資を進めるなど、他の収入源を模索している。しかし、最も困るのは世界最大の資源国であるロシアだ。

ロシアの最大の強みは、シベリアの天然ガスで、世界最大の埋蔵量を誇る。国営企業ガスプロムが利権の大半を握り、生産量の2割をパイプラインで輸出している。最大の輸出先はEUで、EUは石油の3割、天然ガスの4割をロシアに依存している。EU向けパイプラインの8割はウクライナを通過するが、2006年、ロシアはウクライナへの制裁としてパイプラインを停止した。

ロシアは長期戦略として、パイプライン網を黒海経由でハンガリーまで延長し、南東欧全域からイタリアに至る計画を進めている。天然ガスパイプラインをコントロールすることで、消費国への影響力を強める狙いだ。

温暖化で恩恵を受けるロシアと米国の思惑

ロシアは地球温暖化によってむしろ恩恵を受ける国だ。シベリアの凍土が溶ければ農業が可能になり、鉱物資源に加え農産物も持てば最強となる。ロシアは資源を背景に、米国に対抗して世界的覇権を狙っている。中国向けにはパイプラインによる大量輸出を計画し、日本向けにも2009年からガスプロムが経営権を握る「サハリン2プロジェクト」が始動、天然ガスの輸出が始まる。

しかし、これは日本がウクライナと同じ轍を踏む危険性をはらむ。日本がロシアにエネルギーを依存すれば、日米同盟に影響が出る可能性がある。そうした状況下、太陽光発電の普及はロシアのエネルギー外交の威力を減じる。米国が太陽光発電に力を入れる背景には、ロシアの覇権拡大を防ぐ狙いもある。

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