「宝楽って中華料理屋をご存じですか?」
「ああ。知ってる。署で出前を取ることもある。宝楽がどうかしたの?」
「大将が、若い子らの動向をよく把握しているとかで……」
「えっ。そうなの?」
「はい。部活帰りの高校生たちがラーメンなんかを食べによく立ち寄るそうです。当然、生徒さんたちの会話も耳に入ってくるようです」
「……で、大将は今回の件について、いろいろと知っているというんだね?」
「宝楽にラーメン食べにやってくる高校生たちのことはよくわかっているでしょう」
甘糟の表情が明るくなっている。わかりやすい人だ。
「それはぜひ、話を聞きに行かなくちゃ」
「善は急げと申します。すぐに宝楽に行かれてはどうですか?」
阿岐本が言い終わらないうちに、甘糟は腰を上げていた。
「じゃあ、俺はこれで……」
逃げるように代表室を出ていった。
ドアが閉まると、阿岐本が言った。
「これで甘糟さんは、ある程度事情を理解してくれるだろう」
「宝楽の大将に、いろいろと言い含めておかなくていいですかね?」
「いろいろって何だ?」



