文化庁は今年、国立の美術館や博物館の入場料に関し、居住地域によって価格を変える「二重価格」の導入方針を示した。海外ではすでに多くの観光地で導入されており、その効果や仕組みについて、公益財団法人日本交通公社の蛯澤俊典・主任研究員に聞いた。
タージマハルでは22倍の開き
インド北部アグラにある世界遺産・タージマハルの入場料は、インド人が約85円(50ルピー)であるのに対し、外国人は約1870円(1100ルピー)と、実に22倍の差がある。エジプトのピラミッドでも、自国民と外国人で約12倍の開きがあり、こうした事例は世界各地に存在する。
蛯澤主任研究員によると、二重価格は大きく二つのタイプに分かれる。一つは、利用者の居住する国や地域によって値段を変える方式で、タイやインドネシアなどの東南アジア、エクアドルなどの南米で多く導入されている。もう一つは、経済圏と年齢の二つの軸で価格を変える方式で、欧州の美術館などでは、欧州経済領域(EEA)在住かどうかで料金を変えつつ、域内の18歳未満は無料にしている施設もある。
導入の理由と効果
二重価格の導入理由について、蛯澤氏は「観光収入の増加と、自国民への文化的アクセスの維持・促進が主な目的」と説明する。外国人観光客からは高い料金を取ることで収益を上げ、自国民には低料金または無料で文化施設へのアクセスを保障するという考え方だ。実際、タージマハルでは外国人料金の引き上げが観光収入の増加に貢献している。
一方で、批判もある。外国人観光客から「差別的だ」との声があがることもあり、導入にあたっては透明性のある説明が求められる。蛯澤氏は「二重価格は経済的な合理性に基づくものだが、受け入れられるかどうかは、その国や地域の文化や観光政策に依存する」と指摘する。
日本の現状と今後の課題
日本では、国立美術館や博物館の入場料は現在、居住地に関わらず一律である。しかし、文化庁が二重価格導入方針を示した背景には、訪日外国人観光客の増加に伴う収益向上と、国内観光客への負担軽減の狙いがある。財務省からも、閉館も含めた圧力がかかっているとされる。
既に兵庫県の姫路城では、外国人向けの高額料金を導入したところ、3月の入城者が前年比17%減少したが、関係者は「想定内」とし、収益面ではプラスに働いた可能性がある。蛯澤氏は「日本の観光地でも二重価格の導入は進むだろうが、単なる値上げではなく、サービスの質や差別化を伴う必要がある」と提言する。
海外の事例では、韓国ではグッズ収入で差別化する動きや、ルーブル美術館のような二重価格のモデルも存在する。日本が今後、どのような形で二重価格を導入するのか、注目される。



