コロナ禍を経て、より良い暮らしを求めて日本に移り住む中国人が増えています。日中関係が冷え込んだり在留資格の取得要件が厳しくなったりしている現状は、こうした人々の生活や考え方にどのような影響を与えているのでしょうか。数多くの中国人移住者に聞き取りをしてきたジャーナリストの舛友雄大さんに聞きました。
「潤日」の実態と移住理由
海外でより良い暮らしをするために中国から脱出することを中国のネットスラングで「潤」と言います。もともとは「もうける」という意味を持ちますが、発音表記が「run(ルン)」なので、英語の「逃げる」という意味をかけています。目的地が日本なら「潤日(ルン・リィー)」です。
「潤日」では、30~50代で、中間層以上の都市在住者が多いです。移住が最も集中している東京に暮らす中国国籍の人は、2018年と比べて10万人ほど増えて約30万人になりました。
日本が選ばれる理由と在留資格の課題
大きいのは経済的要因で、中国の経済が減速する中で、資産を海外に移して保全しておくということです。また、受験戦争など競争が激しい中国から離れて良好な教育の機会を子どもに与えることや、言論や表現の自由を求めることもあります。
日本が選ばれるのは、生活コストが安いことや地理的な近さ、治安がいいこと、同じ漢字圏であることなどが理由です。かつてのような出稼ぎのためではなく、自分の生活のあり方を重視するための移住と言っていいと思います。
在留資格として多いのは「経営・管理」や「高度専門職」です。「経営・管理」は必要な資金が500万円だったことから、かつて中国人のあいだでは「日本への入場料」といったような言い方もされました。
厳格化の影響と今後の動き
出入国在留管理庁は取得要件を昨年10月に厳しくしました。必要な資金が500万円から3千万円になったことについてよく報道されていますが、実際は日本人や永住者などの常勤職員の雇用義務化が一番大変だという声をよく聞きます。そもそも日本は人手不足ですし、新興の中国系の会社で常勤職員として働いてくれる人材をみつけるのはとても難しいことです。
現在は経過措置の期間中ですが、以前より審査が厳しくなり、在留資格の更新が不許可になったというケースも見られます。不許可になって30日以内の帰国を求められ、銀行口座や住居の賃貸契約の解約、子どもの学校の退学手続きなどすべてをその間にやらなければならなくなった人もいました。閉店した中華料理店も何軒か知っています。
一方で、日本に住めなくなることを恐れて、M&A(企業合併・買収)で事業を拡大したり、MBA(経営学修士)の取得などで「高度専門職」への切り替えを目指したりといった動きも出ています。