中国で1日、有事の際に民間資源を軍需向けに動員しやすくする改正国防動員法が施行された。台湾併吞(へいどん)をにらみ、国を挙げた長期戦に備える狙いがある。改正法には、日本を含む外国企業の資産接収や外国人の徴用を可能にする条項もある。日本や東アジアの国・地域、米国の政府・企業は、中国が戦争準備を進めている現実を直視し、厳に警戒すべきである。
初の改正で「徴収」を可能に
国防動員法は2010年に制定された。今回が初めての改正で、備蓄物資で軍の需要を満たせなければ、国防動員としてインフラ設備を含む民間資源を徴用できると規定している。以前から「いかなる組織や個人も徴用に応じる義務がある」としてきたが、今回の改正で対価なしの「徴収」を可能にした。
人工知能(AI)やドローン(無人機)、ロボットを念頭に「新興領域での国防動員力を発展させる」との条文も新設された。こうした先端技術を戦争に投入する狙いがある。
交通・運輸も動員対象に追加
動員の対象分野は通信やサイバー安全、エネルギーなど多岐にわたるが、改正法では交通・運輸を加えた。台湾や東・南シナ海での有事において、民間の大型船舶を運用することも想定しているのだろう。
国防動員の発動は「国家主権や領土の一体性」などへの脅威がある場合としてきたが、改正で「(国家の)発展の利益」が脅かされる場合も加わった。いかようにも解釈できる規定で、強く危惧する。
国防動員総合局も新設
9月には政府の国家発展改革委員会に「国防動員総合局」も新設された。習近平指導部は「総体的国家安全」を掲げ、国家安全法や反スパイ法、データ安全法などを制定してきた。今回の国防動員法改正は総力戦準備の総仕上げとも位置付けられよう。
ロシアによるウクライナ侵略が長期化し、プーチン露政権は兵員や物資の確保に苦心している。習指導部が教訓としていることは疑いない。中国が台湾有事を起こせば、長期戦になる可能性もある。
中国は来年夏に人民解放軍の創設100年を迎え、秋の共産党大会では習氏が異例の党総書記4期目に入る見通しだ。こうした重要日程を前に、習指導部は日本を「新型軍国主義」と非難する傍らで着々と総力戦準備を進めているのが実情だ。