日本各地でイスラム教徒の土葬やモスク建設に対する反対運動が広がっている。こうした状況を受け、早稲田大学政治経済学術院助手の柴思原(ピーター・チャイ)氏は7月、オーストラリアのシンクタンク「ローウィー研究所」の論評サイトに論文を発表し、「日本政府は移民を社会に受け入れる枠組みを作るべきだ」と提言した。
柴氏はインタビューで、日本人の反応について「反対理由として水質汚染や騒音、交通渋滞などの環境問題が挙げられているが、国民的アイデンティティーといった文化的な問題も背景にある」と分析。水質汚染は正当な懸念としつつも、「騒音や土地利用の問題はモスクや土葬墓地に限った話ではない」と指摘する。
法的枠組みの欠如が混乱を招く
柴氏は「宗教的配慮を考慮した建設に関する具体的な法律の枠組みが必要だ。汚染の測定や追跡方法も導入すべき」と述べ、現状の規制の不十分さを問題視する。日本ではモスク建設に対し、住民が環境問題を理由に反対するケースが相次いでおり、2025年には千葉県市川市でモスク建設反対の声が上がった。
増加する外国人労働者と社会の葛藤
日本の在留外国人数は2025年末時点で約412万人に達し、前年比約10%増加。人口の約3%強を占める。柴氏は「日本人には心理的葛藤がある。一方で労働力不足から外国人労働者が必要と認識しつつ、特に年配世代は民族的な均質性に執着する傾向が強い」と解説する。
本連載「読み解く 世界の安保危機」では、牧野愛博専門記者が国内外の識者にインタビュー。ウクライナ情勢やイラン、台湾、北朝鮮、サイバー空間、気候変動など、世界の安全保障の揺れを多角的に分析している。



