スペインへのグローバル企業の直接投資が高い水準で進んでいる。外資への開放政策を国家成長の柱に据える同国は、EUや中南米などへの戦略的拠点として、日本企業の関心を集めている。本稿では、駐日スペイン大使館経済商務部のゴンザロ・ラモス氏と、スペインで再生可能エネルギー事業を展開するオリックス代表執行役社長の髙橋英丈氏へのインタビューを通じ、その可能性を探る。
底堅いGDP成長率とゲートウェイ機能
人口約5000万人のスペインはEU加盟国中4位の経済規模を誇り、GDP成長率はEU平均を上回る。駐日スペイン大使館経済商務部所長のゴンザロ・ラモス氏は「1980年代の製造業中心の成長からEU通貨統合、グローバル化へと至る過程で、スペインは常に構造改革を繰り返してきた。外資を積極的に受け入れるオープンな市場を構築し、対内直接投資はGDPの約5割を占める」と説明する。
スペインへの投資は約5億人のEU市場への自由なアクセスだけでなく、歴史的なつながりから中南米・北アフリカへのゲートウェイ機能も持つ。ラモス氏は「スペイン企業への投資はそれらのエリアへの有力なゲートウェイとなる。日本の大手IT企業や金融グループの中には、スペインを足がかりにグローバル展開を推進する企業もある」と語る。
高付加価値投資と再生可能エネルギー
スペインではグリーンフィールド投資(新規事業立ち上げ)が活発で、高付加価値領域への投資が増加している。ラモス氏は「本社機能、ICT、研究開発など、質の高い投資が近年の特徴」と指摘する。また、太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギー分野でも注目される。2024年には総発電量の50%以上を再エネが占め、2030年には80%に達する見通しだ。
ラモス氏は「スペインは再エネ発電で多くのノウハウを蓄積し、グリーン水素など新たな取り組みも始まっている。再エネとデジタル基盤の融合領域での投資が加速し、ヨーロッパにおけるグリーン・デジタル・ハブとしての地位を確立しつつある」と述べる。
オリックス、スペイン再エネ市場への進出
オリックスは2021年、スペインの再エネ企業エラワン・エナジーの株式80%を取得し、2023年に100%子会社化した。取締役兼代表執行役社長の髙橋英丈氏は「再エネは日本固有のテーマではなく、海外を含めて最適な事業機会を捉える必要があった。戦略拠点として、再エネ先進市場であるヨーロッパに照準を定めた」と語る。
買収当時、エラワンは世界14カ国で事業を展開し、累計約2.9ギガワットの開発実績と10ギガワット超の開発パイプラインを有していた。髙橋氏は「風力と太陽光発電所の開発で長い歴史を持ち、経営陣も経験豊富だった。買収により、発電所の建設から運営まで一貫して担えるプラットフォームを獲得した」と振り返る。
安定性と人材の魅力
買収プロセスでは駐日スペイン大使館との連携もあった。髙橋氏は「大使館に直接足を運び、商務担当者に相談した。外資とともに産業を育てていく姿勢を感じた」と述べる。EU加盟国で法制度が整っていることも安心材料だった。人材面では「英語でのコミュニケーションがスムーズで、勤勉で前向きな人材が多い。中南米展開でもスペインの人材が大きな力になる」と評価する。
今後の展望について、髙橋氏は「蓄電設備の併設やデータセンターなど周辺領域への展開、アセットマネジメントへのシフトを視野に入れている。スペインを拠点に新たな事業機会を積極的に取りにいく」と語る。オリックスの事例は、スペイン企業とのアライアンスを通じた事業基盤獲得の重要性を示している。



