スモーキングルーム第297回:千早茜が描く戦後ホテルの人間模様とアイデンティティ
スモーキングルーム第297回:千早茜が描く戦後ホテルの人間模様

第297回「スモーキングルーム」では、金ボタンの「新しい世界」という発言をめぐり、砂糖煮の娘が激しく反発する場面から始まる。ザックはブラシを手に作業を続けながら「わたしは金ボタンがおかしなことを言っているとは思わないけど」と静かに述べ、「誰だって、好きに生きる権利がある」と続けた。

金ボタンの発言に砂糖煮の娘が反論

砂糖煮の娘は「言い方ってものがあるわ。新しい世界だなんて、まるでここが古い世界みたいに! ほんと、ときどき金のパパってひどく子供っぽいのよ! いまさら、なにを言うのかしら!」と憤慨した。しかし、ザックに「砂糖煮ちゃんだってここは時代遅れだって言ってたじゃない」と指摘されると、「まあ……そうだけど……」と声が小さくなり、「でも、ここは唯一無二の場所よ」と付け加えた。

ザックが語るホテルの歴史

ザックは「煙にとってはそうみたいだね」と手を動かし続けながら、「それが正しいとか間違っているとか、わたしが決めることではないけれど、ここの人たちはみんなでホテルを守ってきたのだと想像はできる」と述べ、戦争という言葉を飲み込んだ。ザックの国は連合国側であり、もし戦争が続いていたら、彼は砂糖煮の娘が生まれた街に爆弾を落とし、瓦礫の山にした敵国の人間だったのだ。

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砂糖煮の娘は戦時中のことはほとんど覚えていないが、時折、灰色の街を彷徨い歩く悪夢を見る。この宮殿のようなホテルにやってきて、空腹や空襲に脅かされる夜がなくなったときの安堵は、記憶よりもっと深いところに残っていた。

ホテルの人々の絆

ザックは「彼らが若かった頃はきっと青春も選択肢もなかったのだと思う。身内を失った者も多かっただろう。ここのホテルの人たちは、誰かが誰かの親代わりやきょうだい代わりをして、やってきたんじゃないのかな」とたんたんと語った。その言葉を聞きながら、砂糖煮の娘は「あたしたちは孤児なんだわ」と思った。金のパパも、銀のパパも、寄るべなさを抱えているから、自分に手を差しのべてくれたのかもしれない。

砂糖煮の娘の気づき

「そうね。あたし、自分が働けるように時代が変わって欲しいのに、パパたちには変わって欲しくなかったんだわ。あたしが子供だった」と砂糖煮の娘は自省する。本回では、戦後のホテルを舞台に、登場人物たちの過去と現在、そして未来への思いが交錯する。

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