英国の新首相に与党・労働党のアンディ・バーナム党首が就任した。欧州連合(EU)からの離脱を決めてからの10年間で7人目の首相だ。
保守党から労働党への政権交代後も経済停滞と政治の混乱が続いていることが、頻繁な首相交代につながっているのだろう。両党への不信が高まる一方で、排外的な右派ポピュリズム政党・改革党が台頭している。
新首相が混乱に歯止めをかけることができなければ、英国の伝統である2大政党制が揺らぎかねない。英政治は正念場を迎えた。
労働党の政権奪還と前首相の辞任
労働党は2024年の下院選挙で14年ぶりに政権を奪還したが、スターマー前首相は物価高対策で成果をあげられなかった。さらに5月の地方選で大敗し、党首辞任に追い込まれた。
これを受けて党首選が行われ、英中部マンチェスター市長から下院議員に復帰したバーナム氏が無投票で選ばれ、首相となった。
新首相の政策方針
バーナム氏は就任演説で、「1980年代に英国はいくつかの誤った道を選んだ」と述べ、サッチャー政権が「小さな政府」の下で進めた民営化や、中央集権を見直す考えを示した。
具体的には地方分権を進め、民営化によってサービスが低下した水道や交通などを再び公的に管理する「大きな政府」を目指す考えを示している。
だが、英国では低成長が続き、財政の余力は乏しい。格差是正や国内産業の立て直しなどでも、早期に成果を示す必要がある。
今後の展望と課題
次期下院選は29年までに行われる。政党支持率では、改革党が2大政党を抑えて首位に立っている。バーナム氏が党勢を回復できなければ、2大政党以外の政権が誕生する可能性もある。新首相の責任は極めて重大だ。
バーナム氏が就任演説で外交政策に触れなかったのは物足りない。スターマー氏は、ロシアの侵略を受けるウクライナへの軍事支援の先頭に立っていた。
就任前にバーナム氏は、EUとの関係を修復したスターマー氏の路線を引き継ぐ考えを示していた。着実に進めてもらいたい。
トランプ米政権が同盟や国際協調を軽視する中、英国と日本が防衛協力や自由貿易を推進する意義はますます大きくなっている。
新政権との間で、イタリアを含む3か国による次期戦闘機開発を引き続き進める必要がある。日英が加盟する環太平洋経済連携協定(TPP)などを通じ、共に経済成長を実現させていきたい。



