中央大学附属中学校・高等学校(東京都小金井市)は、英語科で「Project in English(PIE)」と呼ぶ独自の授業を行っている。英語でのアウトプット力を高めるのが狙いで、クイズやゲーム、ディスカッションなど、さまざまな仕掛けを楽しみながら、通常の英会話授業よりもフレキシブルに進めていくのが特徴だ。ネイティブと日本人の教員によるチームティーチングで行われた、中3のPIEの授業を見てきた。
PIEの始まりと概要
PIEは2010年度にスタートした。イギリス在住の経験がある英語科の三浦麻美子教諭が、現地校での学習を参考に「自分たちの生きる社会について英語で学びながら、言語の運用能力を高めるカリキュラムが作れないか」と考えたことがきっかけだ。三浦教諭は、大学院でシラバスデザインを修めたネイティブのアダム・ラブ先生らに相談して、中学・高校生に適したプログラムを共に設計した。
PIEは、中学で週1時間、高校で週2時間、ネイティブと日本人の英語科教諭によるチームティーチングで行われる授業だ。英語でのアウトプット力を高めることを主な目的としており、クイズやゲーム、ディスカッション、プレゼンテーションなど、英語の運用能力を高める学習活動が盛り込まれている。英語でのやり取りが基本だが、状況に応じて日本語でも活動指示や説明などがあるので、中学から本格的に英語を学び始めた生徒でも、戸惑うことなく学習に取り組めるという。
学年ごとのテーマ
この授業では、各学年で年間を通して取り組むテーマが設定されていて、中1で「学校生活」、中2で「フィールドワークや移動教室で訪れる日本の地域」、中3で「日本」、高1で「日本と世界のつながり」、高2で「世界が抱える諸問題」、高3で「英語による卒業論文の発表」となっている。これらのテーマは、生徒の発達段階に応じてより広範囲で抽象度の高いものになっている。修学旅行や移動教室などの学校行事と関連付けて、調べたことや学んだことを英語でまとめ、成果を発表する機会もある。
近年は、クラスで成果発表する際の形式を「ライブ発表」と「事前収録動画による発表」から選択できるようにしたり、その評価も、主体性や努力に重きを置く形に変更したりして、生徒たちの個性を尊重して多様性に対応したプログラムになるよう、アップデートを重ねているという。
中3の授業の様子
6月4日、中学3年5組で行われたPIEを見てきた。アダム・ラブ先生と雨笠瞳子教諭がチームティーチングで指導する授業だ。「今日は暑いから、みんな水分を補給して。飲み終わったら、授業を始めようか」。ラブ先生の気さくな声に促され、生徒たちは持参の水筒などから水を飲むと自席に着いた。生徒たちは年間テーマの「日本」に沿って、1学期は日本の地理や歴史、文化に関する話題を取り上げて英語表現を学ぶことになっている。前回までは地理と歴史を扱ってきており、この日は日本文化をテーマとして取り上げた。
PIEは、通常の教科学習の中で習得した語彙や文法を運用することに主眼を置いている。そのため、生徒たちが楽しみながら英語を使えるよう、クイズやゲームがふんだんに盛り込まれている点が一つの特徴だ。相撲、盆栽、忍者など、日本文化を紹介する際によく話題に上る語彙を学んだあと、ラブ先生が「Which parts of Japanese culture do you think foreigners think are cool?(日本文化のどんなところを外国人はかっこいいと思っていると思う)」と問いかけると、生徒たちは「cherry blossoms(桜)」「manga(漫画)」などと口々に自分の考えを述べた。
オンラインプラットフォームを使った選択クイズも行われた。生徒はそれぞれ自分のタブレット上で「Who am I?(私は誰でしょう?)」「What am I?(私は何でしょう?)」というクイズに挑戦。英語で与えられたヒントを参考に、四つの選択肢から正解を選んだ。時折、「a five-story castle」など、難しい単語や表現が出てくると雨笠教諭が、黒板に「5階建ての」などと書いて語句を解説し、生徒たちがスムーズに理解できるようにサポートしていた。
授業の終盤では、数人のグループ内で「Who am I?」「What am I?」のクイズを出し合った。それぞれが自分の選んだ人物や物になりきって「I(私は)」から始まる英文のヒントを出し、聞いていた生徒が答える。日本語は使わず、英語でのやり取りに終始しつつ、生徒たちはコミュニケーションを大いに楽しんでいた。
教員と生徒の声
授業のあと、ラブ先生は「通常の英会話の授業だと、テキストに沿って、定型文を使って、というふうに、パターンが決まってしまいます。そうなると、テストのための勉強になってしまい、英語の運用能力は付きません。私たちが実践しているPIEは、学習活動の選択肢がたくさんあるので、生徒の興味関心に応じてフレキシブルに授業を組み立てられます。生徒たちはPIEをとても楽しんでいます」と話す。
雨笠教諭は、「PIEは、文法ありきでテーマを設定しているわけではありません。文法より文脈を重視していますので、英語圏の学校の授業に近い形で実施できていると思います」と語った。
生徒たちにも話を聞いた。坂本悠真君は、「PIEを経験して、英語でのやり取りが楽しくなりました。自分の思いを伝える時の表現の仕方やコミュニケーションの取り方を学んで、自信を持って話せるようになりました」と言う。
境石渚紗さんは、PIEでアウトプットする際、英語の教科学習で学んだことを生かすよう意識しているという。「授業で教わった文法を使えると、文法知識がしっかり身に付いていることが分かってうれしいです。PIEでは、とにかくたくさん使うことを心がけています」
PIEには、授業だけでなく、学校行事と連動した取り組みもある。2人は昨年行った京都・奈良方面の修学旅行について、現地での思い出や印象に残ったことを英語でスクラップブックにまとめた。京都と奈良の観光スポットや、名産品、伝統行事などを、写真やイラストを付けたA4用紙7枚で紹介している。作成には、およそ2か月を費やしたが、読み手にとって分かりやすく、楽しい読み物になるように工夫を凝らしたという。「PIEは学んだことを使う場所だと思うので、これからもどんどん試していきたい」と、境石さんは今後の学習に意欲を見せた。
「英語を学ぶ上で、たくさん話す機会があること、楽しく取り組めることが大きなモチベーションになります。生徒たちがよりリラックスできて、楽しめて、発信することにためらいがなくなるような状況を作るために、英語科の教員みんなで協力してPIEを発展させたいです」とラブ先生は力を込めた。(文:岡崎智子 写真:中学受験サポート)



