ネパールと中国の国境地帯を襲った土石流災害は26日で発生から1カ月を迎えた。24日時点で確認された死者は両国で1539人、行方不明者は旅行中だった日本人5人を含む6588人に上り、捜索活動は難航している。ネパール側では橋や道路の仮復旧が進む一方、住民は暮らしの再建を模索している。
仮設ジップラインで川を渡る日常
土石流が数十キロにわたって突き進んだ中部のトリシュリ川。その中流域にある町ビドゥールを、記者は21日に訪れた。発災から間もない8月30日に訪れた時と比べ、町を埋めた土砂の量に大きな変化はないが、仮設道路ができており、大型トラックが何台も行き来していた。
橋が流された代わりに、人力で動かす仮設のジップラインが設置された。川の上に張ったワイヤにつるした小さなかごに乗って川を渡る仕組みで、1日に約400人が利用しているという。
「高台に引き返せ」の電話が命を救う
利用者の一人、地元の学校教師アプサラ・リマルさん(30)は8月26日の朝、生徒たちとスクールバスに乗って橋を渡ろうとしていた際、同僚から電話で「大洪水が来る。橋を渡るな、高台に引き返せ!」と言われ、バスを引き返させた。数分後、土石流がすべてを押し流したという。
あれから1カ月。一部が損傷したリマルさんの学校も再開した。リマルさんは「またいつ災害が起きるかわからない。校舎は安全な高台に移転すべきだ」と話した。
住民に突きつけられた移転の是非
20年前から八百屋を経営してきたナラヤン・バンダリさん(66)の家も土石流に襲われた。壁には150センチほどの高さまで浸水した跡が残る。水が引いた後には約60センチの厚さの土砂が残り、孫や妻と一緒にかき出す作業を続けていた。
この建物を使い続けられるのか専門家の診断を受ける予定だが、バンダリさんは「ここは安全ではない。政府が移転方針を決めるというなら、移らなければならない」と悩む。政府は川沿いなどの災害リスクの高い集落の移転を可能にする法案を準備していると報道されている。
土石流はネパールの発展の歩みにも試練を突きつけている。