松江市中心部の松江ニューアーバンホテルに今年度、韓国人男性が入社した。シン・ソンファンさん(26)は島根大学に入学して松江が好きになり、卒業後も残って韓国の人たちに松江の魅力を伝えたいとホテルマンを志した。「旅の思い出が心に残るよう、接客の能力を高めたい」と日々奮闘している。
韓国・釜山出身、島根大で日本語を磨く
シンさんは韓国・釜山出身。高校の時から日本語を学び始め、日本の大学を受験し、2020年に島根大生物資源科学部に合格した。コロナ禍や兵役ですぐに松江には行けなかったが、22年から暮らし始め、落ち着いた雰囲気のある街並みが気に入った。在学時には日本語の勉強に力を入れ、外国人向けの「日本語能力試験」で最高レベルの「N1」を取得した。
卒業後の進路を考える中、「学生時代を過ごした島根で、日本語力を生かした仕事をしたい」と接客や観光の仕事に興味を持つようになり、就職活動で松江ニューアーバンホテルが宿泊者向けのツアーを独自に行っていることを知った。「日本人だけでなく、韓国の人にも松江の魅力を直接伝える仕事ができる」と考え、26年4月、ホテルを運営する観光会社「浅利観光」に入社。フロントに配属された。
朝食時間の延長やガイド通訳で韓国人客に対応
5月中旬、20歳代男女の韓国人3人が本来の朝食の時間を過ぎて食事会場に訪れた。韓国語で事情を聞くと、朝食の時間を間違えたと判明。朝食担当のスタッフに相談し、特別に朝食の終了時間を延長した。「朝食もホテルのサービスの一つ。お客様に寄り添った対応ができたと思う」と話す。
同期入社で韓国語が堪能な田中梨乃さん(23)とともに韓国人観光客への応対を任されている。田中さんはシンさんについて「丁寧な接客や韓国人旅行客に対する応対は学ぶところが多い」と語る。シンさんは「お客様一人ひとりと向き合う姿勢や日本語での対応を見習いたい」と互いを認め合う。
9月中旬には、松江城周辺を巡る宿泊者向けのツアーに韓国人旅行者が参加したため、「ガイド通訳」として同行した。韓国人旅行者から「母国語で説明を受けると、松江の歴史がわかりやすいからありがたい」と感謝され、「松江の良さを伝える手伝いができた」と手応えを感じた。
韓国人観光客の回復、今後の展望
浅利観光の植田裕一社長は「韓国人観光客はホテルにとって大きなターゲットの一つ。彼の果たす役割は大きい」と期待する。「いつか韓国人の目線から宿泊者向けのツアーを企画したい」と夢を抱き、仕事に励む。
島根県内を訪れる韓国人観光客は、コロナ禍の影響で減少した時期はあったが、県によると、2025年の県内の韓国人宿泊者数は延べ1万5008人で、コロナ禍前の水準に戻りつつある。県東部の観光施設でも韓国人観光客の訪問が増えている。足立美術館(安来市)では、26年1~3月の韓国人観光客の来館者数は4729人で、前年同期比で約1500人増えた。特に2月は韓国の名節「ソルラル(旧正月)」の連休とも重なり、前年から倍増となる1677人の人出を記録。ほぼ毎日のようにツアー客が押し寄せていたという。中海に浮かぶ大根島の日本庭園「由志園」(松江市)も、韓国から直行便が到着する米子空港から車で15分と近いこともあり、韓国人の若者やツアー客が例年と比べて増える傾向がみられるという。



