愛知県で開催されるアジア・アジアパラ大会2026の正式競技として、カバディが注目を集めている。日本代表は男女ともに出場するが、そもそもカバディがどんな競技で、なぜ名前だけが広まっているのか。そのルーツと魅力を探った。
「カバディ」の意味とは
日本カバディ協会によると、カバディは鬼ごっことドッジボールが融合したような競技だ。男子の場合、10メートル×13メートルのコートを中央で分け、左右が各チームの陣地となる。味方の1人が相手陣地に進入し、相手にタッチして自陣に戻ると得点が入る。進入した選手は「カバディ、カバディ……」と休みなく唱え続けながら、相手の妨害をかいくぐらなければならない。前後半各20分で得点が多い方が勝ちとなる。
5月中旬、東京・浅草の小学校で開かれた体験会には約10人が参加し、初めてカバディに挑戦した大学院生の笹森貫佑さん(26)は「大人になってもできる鬼ごっこという感じで、とても楽しかったです」と興奮した様子だった。
スタッフとして参加した自称・日本唯一のカバディ研究家の金澤豊さんは「こうやってカバディを楽しむ人が増えてくれればうれしいです」と笑顔を見せた。記者が「カバディとはどんな意味なのですか」と尋ねると、金澤さんは「実は、意味はないみたいなんです…」と意外な答えを返した。
「お坊さんが最強」のスポーツ?
金澤さんによると、カバディはインド発祥で、南アジアで盛んに行われている。仏教との縁も深く、ルーツは紀元前までさかのぼり、狩猟の訓練や叙事詩「マハーバーラタ」のエピソードの再現とも言われる。金澤さんは「紀元前の武人が狩猟や武術の技術を養うために行っていた可能性があり、武人階級だったお釈迦様も、王子時代にやっていたかもしれません」と想像を膨らませる。
1978年にインドでルールが統一され、1979年にインドの動物学者スンダル・ラーマ氏が日本に紹介したのが最初とされる。1989年には大正大学でサークルが結成され、4年後には所属メンバーが70人に増加。金澤さんによると、「カバディに熱心な仏教学部の教授が、単位と引き換えに勧誘していたという証言もあります」という。
大正大学は僧侶を育成する仏教学部を設置しており、サークルには仏教学部の学生が多く、卒業後に僧侶や住職となったメンバーもいる。一時は「お坊さんが最強のスポーツ」と呼ばれる時期もあった。金澤さんも浄土真宗本願寺派の僧侶で、仏教伝道協会の職員だ。
金澤さんによると、大正大学の教授がインドの有名なカバディ選手に「カバディ」の意味を尋ねたところ、「意味はない。もし意味があったら考えてしまい、空になれない」と答えられたという。
アジア大会を機に普及を
日本に伝わって約半世紀。テレビ番組で紹介されると知名度が上がったが、試合が中継されることはなく、「名前は知っているけど競技シーンを見たことがない」という人も増えた。一方で、漫画「灼熱カバディ」のアニメ化(2021年)をきっかけに始めた人も多いという。
日本カバディ協会に登録する2025年度の選手数は男女計約350人程度で、他の競技と比べると少ない。事務局長の河合陽児さんは「カバディは道具も使わず、どこでもできるスポーツの原点。まずはアジア大会でカバディを知っていただき、多くの方々に魅力を体験してもらいたい」と話す。
アジア大会のカバディ競技は9月21~26日、愛知県東海市の東海市民体育館で行われる。



