中国の自動車市場では電気自動車(EV)へのシフトが急速に進んでいるが、ガソリン車の生産・販売が依然として産業の基盤を支えている実態が明らかになった。2023年の新車販売台数約2600万台のうち、ガソリン車は約70%を占め、約1820万台に上る。この数字は、EVが約30%のシェアにとどまることを示しており、ガソリン車の重要性を浮き彫りにしている。
ガソリン車が支える雇用とサプライチェーン
中国自動車工業協会のデータによると、ガソリン車関連の部品サプライヤーは全国に約1万社存在し、直接雇用は約300万人に及ぶ。さらに、販売店や整備工場を含めると、関連雇用は500万人を超えると推定される。これらの雇用は、EVシフトの加速により将来的に減少する可能性があるが、現時点ではガソリン車が自動車産業の雇用の多くを支えている。
地方経済への影響も大きい。広東省や吉林省など、自動車産業が主要産業である地域では、ガソリン車の生産が税収や地域雇用の柱となっている。例えば、吉林省長春市では、第一汽車グループのガソリン車生産が市のGDPの約30%を占める。
EVシフトの課題とガソリン車の役割
中国政府は2035年までに新車販売の50%をEVにする目標を掲げているが、充電インフラの整備やバッテリーのコスト、航続距離への不安など、課題は多い。中国充電インフラ促進連盟によると、2023年末時点での公共充電器の数は約260万基だが、EV販売台数約780万台に対して十分とは言えない。特に農村部では充電器の普及が遅れており、ガソリン車の需要が根強い。
また、ガソリン車の生産は、内燃機関やトランスミッションなどの高度な製造技術を必要とし、これらの技術がEVのモーターやバッテリー製造にも応用されている。中国の自動車部品メーカーである華域汽車系統の技術責任者は、「ガソリン車の技術蓄積がEVの品質向上に不可欠だ」と述べている。
輸出市場でのガソリン車の優位性
中国の自動車輸出でもガソリン車が主力である。2023年の輸出台数約491万台のうち、ガソリン車は約80%の393万台を占めた。特に、ロシアや中東、アフリカなどの市場では、ガソリン車の需要が高く、中国メーカーのシェア拡大に貢献している。中国汽車工業協会の専門家は、「これらの地域ではEVインフラが未整備なため、ガソリン車の需要は今後も続く」と分析する。
一方、欧州向け輸出ではEVの比率が高まっており、2023年の中国からEUへの自動車輸出の約40%がEVだった。しかし、EUの中国製EVに対する追加関税の動きが、今後の輸出戦略に影を落としている。
ガソリン車からハイブリッドへの移行
中国自動車メーカーは、ガソリン車の技術を活かしたハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の開発を進めている。2023年のHEV・PHEV販売台数は約280万台で、前年比50%増となった。比亜迪(BYD)の「DM-i」シリーズは、ガソリンエンジンとモーターを組み合わせたシステムで、燃費性能の高さから人気を集めている。
業界関係者は、「完全なEVシフトではなく、ハイブリッド車が過渡期の現実的な選択肢となる」と指摘する。中国政府も、2035年までの目標にハイブリッド車を含める方向で検討しており、ガソリン車の技術が今後も重要な役割を果たすと見られる。



