トルコのエルドアン政権で外相と首相を務めたアフメト・ダウトオール氏は、現在は公正発展党(AKP)を離れ、野党・未来党の党首を務めている。2016年のクーデター未遂事件の後に導入された「実権型大統領制」について、当時から強い懸念を抱いていたという。トルコ政治の転換点をどう見ているのかを聞いた。
クーデター未遂とその後の変化
2016年7月15日のクーデター未遂事件から10年。トルコはエルドアン大統領の下でどう変わったのでしょうか。あの夜を記憶する人々に取材し、民主主義と統治の現在地を追います。5回に分けて連載します。
Q 16年7月のクーデター未遂をどう見ましたか。
A 現代トルコ政治における「最も汚いクーデター未遂」でした。軍の航空機が国会を爆撃する。これほど深刻な光景はありません。私はその2カ月前に首相を退いていましたし、AKPの中では私を外す動きもありました。それでも、あの日は明確にエルドアン大統領とAKPの側に立ちました。大事なのはトルコ民主主義を守ることだったからです。
別の道はあったのか
Q トルコは別の道を選べたと考えますか。
A 選べました。クーデター後、エルドアン大統領は非常事態宣言を発令し、大規模な粛清を実施しました。私は当時、大統領に「民主主義を強化する方向に進むべきだ」と直談判しました。しかしエルドアン氏は「あなたは正しいが、今は強いリーダーシップが必要だ」と答えました。この回答に私は強い違和感を覚えました。
実権型大統領制は2017年の国民投票で承認され、2018年から正式に施行されました。この制度により、大統領に権力が集中し、議会のチェック機能が弱まりました。私はこの制度がトルコの民主主義を損なうと警告してきました。
現在のトルコ政治への影響
ダウトオール氏は、実権型大統領制下での権力集中が司法の独立やメディアの自由を脅かしていると指摘。また、経済政策の失敗や外交面での孤立も問題視している。
「トルコは今、岐路に立っています。民主主義の回復と法の支配の確立が必要です」と述べ、今後の政治改革の重要性を強調した。



