東南アジアで電気自動車(EV)へのシフトが急速に進んでおり、タイやインドネシアを中心に自動車産業の地図が大きく塗り替えられようとしている。従来の内燃機関車(ICE)を主力としてきた各国の自動車メーカーや部品サプライヤーは、EV対応を迫られており、サプライチェーン全体に影響が広がっている。
タイ:EV生産拠点化を目指す政府の戦略
タイ政府は「EV30@30」政策を掲げ、2030年までに新車販売の30%をEVとする目標を設定。これに合わせて、中国のBYDや長城汽車などが相次いでタイに生産拠点を設立している。タイは従来、日系自動車メーカーの生産拠点として発展してきたが、EVシフトによりその構図が変わりつつある。日系メーカーもトヨタやホンダがEV生産を開始したが、中国勢の攻勢に押されているのが現状だ。
インドネシア:ニッケル資源を活かしたEVバッテリー産業育成
インドネシアは世界最大のニッケル埋蔵量を誇り、EVバッテリーの主要原料であるニッケルを活用した産業育成に力を入れている。政府はニッケル鉱石の輸出を禁止し、国内での精錬・加工を促進。現代自動車やLGエナジーソリューションなどがバッテリーセル工場を建設中だ。また、中国のCATLも大規模投資を計画しており、東南アジア最大のEVバッテリー生産拠点を目指している。
部品供給網への影響と日系サプライヤーの対応
EV化により、エンジンやトランスミッションなど従来の主要部品の需要が減少する一方、モーターやインバーター、バッテリー関連部品の需要が拡大。タイ自動車部品工業会の試算では、2025年までにタイ国内の部品サプライヤーの約3割が事業転換を迫られる可能性があるという。日系サプライヤーはEV対応部品の生産にシフトする一方、中国や韓国のサプライヤーとの競争が激化している。
雇用への影響と人材育成の課題
EVシフトは雇用構造にも変化をもたらす。ICE関連の雇用が減少する一方、EVやバッテリー関連の新たな雇用が生まれるが、必要なスキルが異なるため、労働者の再教育が課題となっている。タイ工業連盟の自動車産業クラスターの代表は「政府と産業界が連携し、労働者のスキルアップを支援するプログラムを早急に実施する必要がある」と指摘している。
各国の政策競争と今後の展望
東南アジア各国はEV産業の誘致競争を繰り広げており、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナムなどが税制優遇や補助金を用意している。国際エネルギー機関(IEA)の報告書によれば、東南アジアのEV販売台数は2022年に前年比で約2倍に増加。この勢いが続けば、2030年には新車販売の25%以上がEVになると予測されている。しかし、充電インフラの整備や電力供給の安定性など、克服すべき課題も多い。



