欧州連合(EU)の電気自動車(EV)市場で、中国製EVの存在感が急速に高まっている。2023年の新車販売台数に占める中国製EVのシェアは約8%だったが、2024年には20%近くに達する見通しだ。これは、EUが中国製EVに対する関税を最大38%に引き上げる方針を発表した後も続いている。
中国製EVの低価格戦略が奏功
中国メーカーの強みは、圧倒的な低コストにある。例えば、比亜迪(BYD)の「シール」は、欧州で販売される同クラスのEVと比べて約30%安い価格設定となっている。さらに、中国政府からの補助金や、部品の内製化率の高さが価格競争力を支えている。
欧州自動車工業会(ACEA)のデータによると、2024年第1四半期の中国製EVの販売台数は前年同期比で約50%増加した。一方、欧州全体のEV販売は同10%減と低迷している。
関税引き上げの効果は限定的
EUは2024年7月、中国製EVに対する関税を現行の10%から最大38%に引き上げる暫定措置を発表した。しかし、専門家は「関税だけでは中国メーカーの勢いを止めることはできない」と指摘する。中国メーカーは既に、東欧など関税の低い国に工場を建設し、EU域内生産を開始している。
例えば、BYDはハンガリーに工場を建設中で、2025年には稼働を開始する予定だ。また、上海汽車集団(SAIC)もスペインでの生産を検討している。これにより、関税の影響を回避しながら欧州市場でのシェア拡大を狙う。
欧州メーカーの苦境と対応
中国製EVの攻勢に、欧州の自動車メーカーは苦戦を強いられている。フォルクスワーゲン(VW)は2024年7月、EV販売の低迷を受け、ドイツの工場で生産調整を実施すると発表した。同社のEV販売は前年比で15%減少している。
一方、ステランティスは中国のEVメーカーとの提携を模索しており、2024年6月には中国の零跑汽車(Leapmotor)との合弁会社設立を発表した。これにより、低価格EVの開発・販売を加速する方針だ。
今後の見通し
欧州委員会の試算では、2030年までにEUの新車販売に占めるEVの割合は50%以上になると見込まれている。中国製EVはそのうちの3割以上を占める可能性があり、欧州市場における中国メーカーのプレゼンスは今後さらに高まると予想される。
関税引き上げや補助金の見直しなどの政策対応が進む一方で、中国メーカーの低価格と技術力の優位性は揺るぎそうにない。欧州自動車産業にとって、中国製EVとの競争は今後も続く。



