高市首相は2026年7月31日、食料品の消費税率を2027年4月から2年間、1%に引き下げると記者団に表明した。自民党は2月の衆院選で、2年限定で食料品の消費税率をゼロにする「検討を加速する」と公約していた。首相の今回の表明はこれにこだわったものだ。
しかし、かねて指摘されている多くの問題点は払拭されないままだ。再考を求める。
財源不足と社会保障への懸念
政府と与野党でつくる社会保障国民会議の中間とりまとめでは、消費税率1%案にほとんどの野党が反対し、一本化できなかった。首相が1%案を断行しようとするのに対し、野党は「結論ありき」と批判する。
消費減税に合わせ、働く中低所得者向けに、食料品の消費税1%分の税収に相当する年6000億円の給付も2年間行う。事業者のシステム改修の都合で税率を0%にしない代わりに、1%分の給付を加えることで「実質ゼロ」とみなす。首相は補助金見直しや税外収入などによって「特例公債に頼ることなく財源を確保する。ゼロベースで進める」と述べるにとどまり、農家や外食産業などへの支援について踏み込まなかった。
社会保障財源への影響
消費税は社会保障制度の維持に欠かせない安定財源だ。26年度予算で社会保障給付費は144兆円に上り、その60兆円弱を税や国債などの公費で賄う。公費の主要部分は消費税を充てているが、現在の消費税収34兆円だけでは賄えていない。消費減税と給付を行えば、年5兆円もの財源を失い、大きな穴があく。社会保障給付の財源確保に支障を来しかねない。
自民党内の慎重論
消費減税を巡っては、自民党内では財政規律を重視するベテランからの慎重論が相次いだ。河野太郎元外相は「中東情勢で選挙の時とは大きく違った状況になっている」として反対する考えを明言。森山裕前幹事長も「財源なき減税はあってはならない」と訴えている。首相は来月初めに消費減税方針を閣議決定する考えで、自民党は税制調査会などで議論する。減税がもたらす懸念をどこまで払拭できるのかが問われる。
自民党が衆院選で得た316議席は貴重な政治資産だ。首相は、大きな弊害が予想される消費減税に政治資産を浪費するよりも、長期的な国益に資する防衛力強化や社会保障制度の抜本的改革などにこの資産を使うべきだ。



