「ブリリアント・ジャーク」を許す心理の正体と組織の罠
ブリリアント・ジャークを許す心理の正体と組織の罠

「優秀だけど嫌な奴」――ブリリアント・ジャークと呼ばれる人物が、なぜ組織の中で許容され続けるのか。その心理的な背景には、人間の認知バイアスが深く関わっている。作家でワークスタイル&組織開発専門家の沢渡あまね氏と、ビジネスリサーチラボ代表取締役の伊達洋駆氏が、そのメカニズムを解き明かす。

「功績」がもたらす誤った評価

圧倒的な実績を上げたトッププレイヤーが、その功績を評価されてマネージャーに抜擢されるのは、ビジネスの世界では自然な流れだ。しかし、そこには「名選手が必ずしも名監督になるとは限らない」という罠が潜んでいる。プレイヤーとしての能力(自分自身で結果を出す力)とマネジメントの能力(他者を通じて結果を出す力)は異なるにもかかわらず、経営陣は「これだけ成績が良いのだから、マネジメントもできるはずだ」と、強烈な実績に引きずられて評価してしまう。

ハロー効果が生む被害の隠蔽

厄介なことに、ブリリアント・ジャークの中には自己演出に長けた者もいる。権力者の前では礼儀正しく振る舞い、部下の前では暴君と化すこともある。上層部は彼らの見えている部分、見たい部分しか見ていないため、現場から「あの人はひどい」という悲鳴が上がっても、「まさか、あの優秀な彼がそんなことをするはずがない」と否定される。こうしてハロー効果という霧の中で被害者の声は揉み消され、加害者は期待のリーダーとして昇進していく。

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「ブリリアント・ジャーク」という言葉の罠

「そうか、あの人は『ブリリアント・ジャーク』だったのか!」――この言葉を知ることで、胸のつかえが取れたように感じる人もいる。正体不明の理不尽な苦しみに名前がつくことで、自分は被害者だと正当化され、安心感が得られるからだ。しかし、この言葉には甘美な罠がある。それは、自分にとって都合の悪い相手に「ジャーク」というレッテルを貼ることで、思考停止に陥ってしまうリスクだ。根本的な帰属の誤り(自分に都合の良い説明をしてしまう認知バイアス)が、問題の本質を見えにくくする。

組織が変わるために必要な視点

ブリリアント・ジャークを生み出さないためには、経営陣がハロー効果を自覚し、プレイヤーとしての能力とマネジメント能力を切り分けて評価する仕組みが必要だ。また、現場の声を聞く仕組みを整え、権力者の前と後で態度が変わる人物を見抜くことも重要である。組織全体で認知バイアスを認識し、健全なフィードバック文化を育てることが、ブリリアント・ジャークの蔓延を防ぐ鍵となる。

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