夏の暑さに対する働き方の二極化が進んでいる。「暑いから出社したくない」という声がある一方で、「暑いから出社したい」という意外な本音も聞かれる。その背景には、エアコンの効いた自宅よりも、むしろオフィスの方が涼しいという現実がある。しかし、この選択は単なる快適さの問題ではなく、法的な義務や企業の責任にまで発展している。
熱中症対策の法的義務化
2025年6月、職場での熱中症対策が法律で義務化された。違反した場合、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される。この法律は建設現場だけでなく、オフィスワーカーを含むすべての事業者に適用される。企業には、熱中症の兆候を早期に把握する体制の整備や、重篤化を防ぐための対応手順が求められている。「暑さ対策は個人の自己管理」という考え方はもはや通用しない。
この罰則の導入は大きな意義を持つ。これまで努力目標だった熱中症対策が、明確な法的義務へと格上げされたのだ。人事や総務の担当者だけでなく、現場のマネジャー一人ひとりがこの変化を理解する必要がある。
世界各国の暑さ対策
暑さへの対応は日本だけの課題ではない。世界各国も独自の対策を進めている。2026年6月、ヨーロッパは記録的な熱波に見舞われ、平均気温が例年を10度前後上回る地点があった。フランスやドイツでは最高気温が40度を超え、WHOは6月21日以降の死者数が例年より1300人以上多いと発表した。スペインでも熱波による健康被害で1000人以上が死亡。今年上半期の平均気温は観測史上最高を記録した。暑さはすでに「命に関わる経営課題」となっている。
フランスでは、労働者の安全配慮義務に基づき、熱波発生時に勤務時間を涼しい時間帯へシフトさせることや、テレワークの活用が強く推奨されている。スペインでは、伝統的な「シエスタ」の習慣を生かし、朝夕の涼しい時間帯に勤務をシフトする企業が増えている。アメリカでは、連邦労働省の労働安全衛生局が、屋外および屋内労働者を熱関連の危険から守るための重点プログラムを施行している。ITやテクノロジー分野を中心にリモートワークが定着しており、猛暑時の安全な働き方として機能している。
各国に共通するのは、「暑さは個人の問題ではなく、企業が対応すべき労務管理の課題」という認識だ。
企業が取るべき対策、3つの視点
企業は以下の3つの視点から対策を講じる必要がある。第一に、法的義務を遵守するための体制整備。第二に、従業員の健康を守るための環境整備。第三に、柔軟な働き方の推進。これらを統合的に実施することで、夏場の生産性向上と従業員満足度の向上が期待できる。また、熱中症対策を企業の社会的責任として捉え、積極的に情報発信することも重要だ。



