中学時代の高井宏章さんは、ポケットに手を入れカメラを睨みつける、いわゆる昭和のツッパリ少年だった。しかし、その後の人生は大きく変わる。名古屋大学法学部を卒業し、日本経済新聞社で編集委員やロンドン駐在を経験。在職中に娘のために書き始めた青春経済小説『おカネの教室』が累計10万部を超えるベストセラーとなり、現在は千葉商科大学付属高等学校の校長を務める。
看板屋の三男坊が描いた意外な進路
高井宏章さんは1972年、愛知県名古屋市で看板屋を営む家庭に生まれた。父は中卒の職人、母は商業高校卒。家業が倒産し、多額の借金を抱えたこともある。2人の兄は地元の工業高校を出て就職。親族で大学に行く人は正月にしか会わないいとこだけだった。日常的に出入りする大人の中に、四年制大学を卒業した人は一人もいなかった。
少年時代を過ごしたコミュニティでは、違法行為に手を染める中学生や、万引きを組織的に行う同級生、椅子を振り上げる友達もいた。高井さんは「ちょっとここでは言えないくらい、ろくでもない連中とつるんでいた時期がありますね(笑)」と振り返る。
恩師の一言が人生を変えた
高校受験直前、高井さんは地元の工業高校に進学し、卒業後は働くつもりだった。しかし、中学の担任教師が「俺より成績いいのに、普通科にしないの?」と声をかけた。この一言で進路を変更し、普通科の高校へ。その後、名古屋大学法学部に進学した。
「見えなかった選択肢を見せる側になりたい」と高井さんは語る。大学卒業後は日本経済新聞社に入社し、20年以上記者として活動。編集委員やロンドン駐在を経て、2023年に退職した。
娘のために書いた小説がベストセラーに
在職中、小学5年生の娘に向けて家庭内で連載を始めたのが、青春経済小説『おカネの教室』。経済の仕組みを物語形式で伝える内容が評判を呼び、累計10万部を超えるロングセラーとなった。
現在は千葉商科大学付属高等学校の校長を務め、教育現場で若い世代に選択肢を示す活動を続けている。



