島根県益田市横田町の松本医院の松本祐二院長(74)が、書籍「親を『住みなれた家で見送ってあげたい』と思ったら読む本」(159ページ、税込み1760円)を出版した。45年にわたって在宅医療に関わった経験から、健康に長生きするポイントや自宅で親をみとるための必要な知識などをまとめた。「住み慣れたわが家で最期を迎えたい患者や家族に知恵を授けられれば」と話す。
医師になった経緯と在宅医療への取り組み
松本さんは、現・昭和医科大での勤務を経て、松本医院の院長だった父の死をきっかけに29歳で後を継いだ。その後、45年にわたって医院での診療とともに、患者の自宅や入所施設に出向く在宅医療にも力を注いだ。
医師になった1980年代は「親の介護は子どもや家族が行うもの」という風潮が根強く、「家族への負担が大きく、在宅患者への尊厳もなかった」と語る。
印象に残る高齢女性の最期
今でも印象に残る経験がある。ある時、往診をしていた高齢女性の家族から「呼吸が止まった」と連絡を受けて、女性宅に向かった。家族に案内されたのは、いつも診察する座敷ではなく、窓が一つしかない薄暗い一室。枕元には食べ物がそのまま転がっている状況で、女性はそのまま死亡が確認された。
事情を聞くと、普段からこの部屋に住まわせ、診察がある時だけ座敷に移動させていたことが判明。当時はまだ高齢者との向き合い方や在宅医療について理解が乏しく、患者を周囲に見せたくないという家族側の考えも要因となったとみられる。「ずっと薄暗いところで生活し、こんな場所で人生の最期を迎える状況を見て、心が痛くなった」と話す。
介護保険制度の開始と情報共有の変化
転機は、2000年の介護保険制度の開始だった。これまでと比べて、医師やケアマネジャーが直接、高齢者の生活に介入し、適切な支援をしやすくなった。また、患者宅を訪問した看護師や介護ヘルパー、薬剤師、患者の家族などに限定したSNSで、患者の状態や症状などについて共有。迅速な判断や状況把握が可能になるほか、病状の可視化によって患者や家族の安心につなげてきた。
長年、在宅医療に関わる中で、「できる限り住み慣れたわが家を離れたくないと感じる高齢者が増えている」と感じるようになった。「悔いのない最期を実現するため、広く知識を知ってもらいたい」と書籍の発刊を決めた。
書籍の内容と購入方法
書籍では、自身が担当した市内の患者のエピソードを交えながら、健康に日々を過ごすためのコツのほか、デイサービスや終末期医療の基礎知識を紹介。どのような最期を迎えたいかを共有しておくことの大切さを説いている。松本さんは「高齢患者やその思いに向き合う家族の役に立ててもらえるとうれしい」と話す。
書籍は全国の書店やネットで購入できる。