オーストラリアの宇宙スタートアップHEO(ヒーオ)のウィリアム・クロウ最高経営責任者(CEO)兼創業者が読売新聞のインタビューに応じ、日本市場への期待を示すとともに、「日本は宇宙分野において独自の技術開発に投資し続ける必要がある」と語った。
非地球画像のパイオニア
HEOは、地球観測衛星などに搭載されたカメラを「間借り」したり、衛星にカメラを提供したりして、軌道上を飛ぶ別の人工衛星やスペースデブリ(宇宙ごみ)に接近して高解像度で撮影する「非地球画像(Non-Earth Imaging)」のパイオニアの一つ。画像をAIで解析することで、故障した衛星の状況把握や、安全保障上の能力評価を行うサービスを提供している。
クロウ氏は「我が社は、太陽系のあらゆるものをオンデマンドで画像化する。従来、衛星が故障すればあきらめるしかなかったが、今ではまず我々が写真を撮って、どうなっているか確認することが(対応の)第一歩になる」と説明した。
日本市場への評価と協業
日本市場については「革新的で新しいアイデアの実験が盛ん」と高く評価。すでに防衛省や、デブリ除去に取り組むアストロスケールホールディングス、超小型人工衛星を開発するアクセルスペースといった日本のスタートアップと協業を進めていることを明かした。6月に打ち上げられた「H3ロケット6号機」では、デブリ発生防止装置を開発するBULLが実証機で実験した様子を撮影したという。
規制の少なさと宇宙のルール形成
HEOが創業から短期間で急成長した背景についてクロウ氏は、オーストラリアの宇宙ビジネスへの規制の少なさを挙げた。「オーストラリアの規制は1980年代、90年代におけるロケット打ち上げなどを想定していて、我々のビジネスのように、宇宙での撮影に関するルールはなかった。米国が注力していない分野で非対称的に能力を構築できれば、結果的に同盟国への大きな貢献にもなる。日本も同じことが言えるのではないか」と語った。
地球を周回している稼働衛星は約1万5000機で、さらに今後も数百万機の打ち上げが計画されている。クロウ氏は宇宙におけるルール形成について「すべてを単一の中央機関で管理することは不可能になる。航空機や船舶のように、中央の権威がなくても機能する、『規範(Norms)』に基づく相互調整へと移行するべきだろう」との見解を示した。
宇宙主権と独自打ち上げ能力の重要性
昨今注目が集まる「宇宙主権」についてクロウ氏は、「日常生活に必要な宇宙資産をコントロールできること」と定義。その上で、急速に過密化する宇宙空間における「宇宙主権」の重要性と、独自の打ち上げ能力を保持し続ける必要性を訴えた。
クロウ氏は、米スペースXやアマゾン・ドット・コムなど、多数の小型人工衛星を連携させて通信サービスを提供するメガコンステレーション企業が、ロケットの製造から衛星の開発・運用までを自社で一貫する「エンドツーエンド」のビジネスへと移行していると指摘。「自社のロケットを使って自社の衛星通信網(コンステレーション)をいち早く拡大し、そこから継続的なサービス収益を上げる方が、単発で他社の衛星を運ぶ(打ち上げる)だけのビジネスよりも利益が大きく、経済合理性があるためだ」と説明した。
「今後他社のペイロード(人工衛星や輸送物資)を打ち上げるインセンティブは失われていくだろう。だからこそ、海外企業が他国の利益を最優先すると期待すべきではない。日本は『H3ロケット』などの独自の打ち上げ技術に投資し続けることが絶対的に必要だ」と話した。



