中国経済は電気自動車(EV)分野などで目覚ましい躍進を遂げているが、その一方で「ゾンビ企業」と呼ばれる非効率な企業を温存し、過剰な投資に依存する「二重経済」の構造が長期低迷のリスクをはらんでいる。東洋経済の特約記者リチャード・カッツ氏は、中国がより多くの投資を積み重ねることで労働生産性を高めようとしているものの、経済が成熟するにつれて投資の収益逓減に直面していると指摘する。
投資の収益逓減と全要素生産性の低下
カッツ氏は雲南省での事例を挙げ、近代的な道路建設が自給自足農業を市場志向に変え、生産性と農家収入を大幅に向上させたことを紹介。しかし、ある時点を過ぎると、追加のGDP成長を1元得るためにはるかに多くの人民元を道路建設に投じなければならなくなるという。中国は「より良い投資」ではなく「より多くの投資」に執着していることが、現在の苦戦の主な原因だと同氏は分析する。
全要素生産性(TFP)は、企業が技術革新をいかに活用しているかを測る指標であり、長期的な成長には単なる大量投資ではなく健全なTFPの伸びが必要とされる。鄧小平の改革が始まった1980年から2009年まで、労働者1人当たりのGDP成長率は年率9.3%と驚異的で、その3分の1はTFPの成長によるものだった。しかし、世界銀行のデータによると、2013年から2022年(最新データ)までのすべての年でTFPの成長率はマイナスとなった。
習近平政権下での政策転換とゾンビ企業の温存
カッツ氏は、中国が苦境にあるとすれば、それは中国の奇跡を生み出した多くの政策を逆転させる習近平の決定の結果だと主張する。北京政府は経済の欠陥に向き合う代わりに、経済の欠点を指摘することを国家安全法違反としている。これにより、非効率な国有企業や過剰債務を抱える「ゾンビ企業」が淘汰されず、資源の誤配分が続いている。
一方で、EVや再生可能エネルギーなどの先端分野には巨額の投資が集中し、一部の企業は世界的な競争力を持つまでに成長している。しかし、この「二重経済」構造は、成長セクターと停滞セクターの格差を拡大させ、経済全体の生産性向上を阻害している。
長期低迷の罠と今後の展望
カッツ氏は、中国が過剰投資とゾンビ企業の温存を続ける限り、長期的な低迷に陥る可能性が高いと警告する。投資の収益逓減が進む中、TFPのマイナス成長が続けば、労働者一人当たりのGDP成長率はさらに鈍化する。改革を断行し、非効率な企業を整理して資源を生産性の高い分野に振り向ける必要があるが、政治的な制約がそれを難しくしている。
中国経済の今後は、EVなどの先端産業がけん引する一方で、ゾンビ企業の処理と制度改革が進むかどうかにかかっている。さもなければ、「まやかしの二重経済」が長期低迷の罠をもたらす恐れがある。



