富山県内の製造業で、夜間の勤務を廃止する動きが広がっている。最新の機器を導入して、人が担っていた業務を代替し、無人化を進めるというものだ。従業員の健康維持や、ワーク・ライフ・バランス向上に寄与するだけでなく、人材確保にも効果がありそうだ。
CKサンエツ、9工場中8工場で夜勤レス達成
伸銅事業などを手がける「CKサンエツ」(高岡市)は業界では先駆けとなる「夜勤レス」を打ち出し、2016年から取り組みを進めてきた。
最初に、グループ会社で給水管などのパイプをつなぐ鉄管継手を製造する「リケンCKJV」(同)の工場で夜勤を廃止した。かつては素材を加熱する炉が毎日24時間稼働する3交代勤務の職場だった。自動搬送装置や遠隔の監視カメラなどを導入し、無人運転を可能にした。勤務時間は原則午前8時~午後5時となり、夜勤レスを実現した。
これを機に設備投資を進め、現在ではCKサンエツグループの9工場中8工場で夜勤レスを達成。4人が夜勤に従事する残る1工場も増築工事を行い、2027年7月中には夜勤がなくなる見込みだ。
社員の声と経営効果
自身も夜勤経験がある釣谷宏行社長は「時差ぼけのようで頭が働かず気分も悪い。社員に強いるのはつらいと思った」と振り返る。深夜の工場勤務は勤務人数も少ないため、トラブル対応も困難だった。
社員からは当初、「夜勤手当がなくなり収入減になる」と反発があったが、いざ夜勤がなくなると「体が楽」「家族との時間が増えた」との声が上がった。設備投資で生産性を上げたことで収益も増し、賞与や給与水準の向上で還元した。リケンCKJVの五島明さん(44)は「家族が起きている時間に帰れるようになった」と喜び、釣谷社長は「配属の柔軟性が上がり、グループの一体感も増す」と意義を語る。
YKK APも無人化を推進
建材大手「YKK AP」(東京)は2025年度、窓やドアなどに付属する部品を作る「黒部越湖製造所」(黒部市)で夜間、窓の鍵を組み立てるラインを無人化した。
組み立てラインは夜間、従業員1人が部品供給などにあたっていたが、ラインの作業に適合した産業用ロボットを導入し、省人化した。同社が夜間、ラインの無人化を進めたのは国内で黒部越湖製造所が初めてという。生産性も向上し、表孝映・製造所長は「身体的負担が減るだけでなく、人材採用が厳しくなっているなか、働きやすい環境作りに寄与できている」と語る。
専門家の見方
働く環境に詳しい、リクルートワークス研究所の村田弘美・グローバルセンター長は夜勤廃止が広がる背景に、人手不足のほか、シニアや女性など多様な人材の活躍、テクノロジーの進化と低価格化を挙げる。
夜勤ができない子育て中の女性や、夜勤を敬遠するシニア世代の採用も可能となる。村田センター長は「夜勤廃止には設備投資が欠かせず、資金力のない企業にとってはハードルが高い。また、社員の収入が一時的に減るため、説明も必要だ」とした上で、「人材確保だけでなく、地域の先進企業としてアピールもできる」と導入のメリットを語った。



