岡山県津山市にある上田手漉和紙工場は、金箔と金箔の間に挟む「箔合紙」を手漉きで製造する日本唯一の工房だ。約220年の歴史を持ち、7代目の上田康正さん(60)が1人で技術を守り続けている。しかし、年商は30年前の3分の1に減少し、後継者も見つからず、「私の代で最後かも」と危機感を募らせている。
手漉きで箔合紙を作る唯一の職人
箔合紙は、0.03ミリという極薄の和紙で、繊細な金箔を傷つけずに挟むために使われる。現在、手漉きでこの箔合紙を製造しているのは日本で上田工場のみ。フランス人の製本家が「どうしても作り手に会いたくなって、日本まで飛んできました」と訪ねてくるほど、海外からの関心も高い。
しかし、需要に対して供給が追いついていないにもかかわらず、商売は縮小傾向にある。「昔は仏壇に金箔が多く使われていましたが、徐々に金箔の使用量が減っています。同時に、手漉きの工房も減りました。子どもの頃は近隣に6軒ありましたが、今はうちだけです」と上田さんは語る。
需要に供給が追いつかない矛盾
金箔の需要減少に加え、手漉き和紙の生産コストの高さも経営を圧迫する。上田さんは「一番いい和紙を作ろうと思うと、国産のミツマタに行きつく」と原料にもこだわる。ミツマタの皮を冷たい川でさらす伝統的な工程は、品質維持に欠かせないが、労力と時間を要する。
「どれか一つが欠けたら和紙は作れない」と上田さん。原料、水、技術、すべてが揃わなければならないが、後継ぎがいない。需要は世界に広がっているのに、稼ぎは細る一方。注文が半年待ちになることもあるが、1人でこなせる量には限界がある。
後継ぎは、いない
売り上げの大半は海外向け輸出だが、国内の金箔需要減少を補うには至っていない。上田さんは「私の代で最後かもしれない」と覚悟をにじませる。工房の存続には、後継者の育成と、手漉き和紙の価値を理解する市場の拡大が急務だ。



